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苦闘し続けたミュージシャン・七尾旅人が「メジャーレーベルと2年で決別した理由」

 ’98年、19歳にしてメジャーデビューしたシンガー・ソングライターの七尾旅人。当時“天才”ともてはやされたものの、メジャーシーンと相いれることはなく、わずか2年で所属レコード会社からの離脱を選択。だが、彼は“消える”ことはなかった。9.11のテロ事件以降の日本を描いた3枚組の大作『911FANTASIA』や、戦後1人目の戦死者を自ら演じた映像アルバム『兵士A』など、インディペンデントな立ち位置から次々と野心作を発表。一方、ポップな楽曲でもリスナーを魅了してファン層も拡大している。他のミュージシャンにはないような幅広い活動が、彼が唯一無二の存在と言われるゆえんだろう。新作『Stray Dogs』は20年の苦闘を超えてたどり着いた最高傑作だ。 七尾旅人

苦悩する“歌い人”

──音楽活動が今年20周年ですね。 七尾:振り返ってみると、いろいろありましたね。10代でメジャーデビューはしたけれど、当時のレコード会社は景気がよくてイケイケだった半面、無責任なところもあって。「こんなのあり?」って光景をたくさん見まして、そこからインディペンデントの道を選んで。 ──独立以降に見えてきたものはありましたか? 七尾:気づけたことは多かったですよ。後ろ盾がないから逆になんでもやれて、皆に止められるような内容にもトライできた。3枚組のアルバム『911FANTASIA』もそうです。老人と孫の会話という構成で、冷戦時代のアポロ月面着陸から9.11に端を発するイラク戦争以降、近未来までの世界の変化をSF的な物語として提示したけど、当時はなかなか理解されづらかったですね。 ──9.11へのリアクションがないことに憤りがあった? 七尾:自分らの世代は、’95年の阪神・淡路大震災とかオウム事件を多感な時期に経験していて。日常なんて簡単に崩れ去るという危機感を抱えていましたが、それに呼応するような音楽はほとんど聴こえてこなかった。20代は離れ小島に一人でいた感覚でしたね。
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メジャーにいた2年は常に寂しかった
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Stray Dogs

収録時間77分7秒。「20年分の感謝をこめた」という12曲収録の最新アルバム。CDジャケットは岡田喜之によるイラストレーションで、全ページが絵本仕様となっている。フェリシティより12月12日発売。3024円

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