ライフ

自衛隊の“トイレットペーパー自腹問題”が、感動の結末を迎える

自衛隊のトイレは和式、基本的にはウォシュレットはない

 自衛隊の予算については、自衛隊ならではの「理不尽に耐え、搾取されても政治に文句を言わない」という組織ゆえに、ありえない予算不足と自腹構造がずっと続いてしまったわけです。理不尽な仕打ちに耐え、隊員1人1人が我慢し文句を言わずにいたのをよいことに、政治や社会がその現場自衛官達の美質に甘えてきてしまった、そのことが残念でなりません。政治に意見を言えない彼らの職場環境は、国会で話題に上ることがなかったのです。
自衛隊

陸上自衛隊Facebookより

 その象徴が、トイレットペーパーですら予算不足で買えず、隊員が自腹で購入しているというあきれた状態でした。  トイレットペーパーが無いためにトイレを封鎖したり、自費購入が常態化しているために売店でペーパーが1ロール単位で販売されているのもよく見る光景でした。トイレの掲示板に「ペーパーは私物だから使うな」と掲示される珍現象もあちこちで目撃されました。  自衛隊――防衛省は国の機関です。だから「国の施設でまさかそんなビンボー事案が起こるわけがないだろう」とみんなそう思っていました。この自衛隊ならではの不思議な光景を知った奥様方が「いくらウォシュレットがあるからって、トイレットペーパーがないと困りますわね」と言ったという話がネットの噂として伝わってきたことがあります。「国のような組織なのだからトイレットペーパーがなくてもウォシュレットはあるだろう」と思った人がいたのかもしれません。ネットの噂ですから、誰かが面白おかしく作った話かもしれませんが、マリー・アントワネットの逸話として語り継がれた「パンがなければお菓子を食べればいいのに」に似ていますね。  商用施設のトイレには自動蓋開け機能や使用音を聞こえなくする水音発生機能、温かい便座機能がついている高機能ウォシュレットが整備されていたりします。我が国の技術力や衛生管理のすばらしさに外国人が驚愕するようです。しかし、我が国が誇る自衛隊にはそんな文明の機器を導入するような予算はありません。お客様をお迎えすることが多い特別なセクションでなければウォシュレットなどありません。トイレットペーパーすら買えない自衛隊に高額なウォシュレット配備など夢また夢です。しかも、自衛隊のトイレは今も多くが和式です。施設自体、果たして耐震構造になっているのか不安になるような古い建物が多いのです。それもまた、ツライのです。

現場の隊員は爪に火をともすような生活

 防衛省や自衛隊に限らず、私たち庶民は国の機関は経費が自由に使えるリッチな存在なのだろうという想像をしているようです。バブル時代までは霞が関官僚は夜な夜なタクシーチケットを使って飲み歩けたのかもしれませんが、それは大昔のこと。今はどこもかしこも予算を絞られ厳しいようです。自衛隊でも一部の高官様はともかく、現場の災害派遣で汗を流し、人を救い国を守ってくれる隊員さんたちは本当に爪に火をともすような生活をしています。その一端がこの件でわかっていただけたかと思います。  さすがに自衛隊にウォシュレットがつけられることは無いだろうと思いますが、ペーパーがあるという「人として最低限の安堵感」は絶対に必要ですよね。誇り高い隊員さんたちが給料日前のキツイ時期に「厚生費・衛生費」名目でトイレットペーパー等様々な日用品を買うための集金をされないようになればいいですね。自分の給料を経費に充てることなく全額自分で使えるようになればと切に思います。一般の職場では当たり前のことですが、クリスマス前の小さな幸せになればいいなと思います。<文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

1
2
自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

おすすめ記事