更新日:2019年10月18日 21:32
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安倍政権による改憲は遠のいたのか? 立憲的改憲の立場から倉持麟太郎氏が警鐘を鳴らす

権力者が軍事力を使うための憲法が「面倒」なのは当たり前

 そして、これは飽くまで試案であり、これからの国民的議論の叩き台になれば、という提案なのだが、やはり「一読しただけでは理解が難しいのではないか?」という疑問を倉持氏にぶつけると、次のような答えが返ってきた。 「難しいのは『当たり前じゃないか』と思いますね(笑)。なぜなら憲法は権力への規範です。権力者が軍事力を使うのは超面倒くさいし、それがわからないと使えないよ、ということを示したかったんです。ドイツの憲法の規定なんかはもっと細かくていろんなことを書いてある。憲法の単語数という話がありますが、世界の憲法の平均値が2万語程度なのに対して日本国憲法は4900語程度。つまり、抽象的な憲法であり、細かく明確な権力統制の観点からは問題があるのです。9条はもっとも先鋭的な暴力を規定するものですから、要は『軍事力を使おうと思うと面倒くさいよ。使う場合はこれぐらいのことはクリアしてもらえないと、使えないよね』ということです」  そして、何よりも「9条2項が死文化していたことを正面から認め、本来の価値を蘇らせたかった」と倉持氏は語る。 「我々の考えでは、本来であれば9条2項を削除し、新しい条文を付け加えるのがベストです。しかし、いきなり『9条2項削除』というと、なかなか理解されないという政治的配慮もありました。ただ、現状では9条2項は死んでいるんですよ。その規範力を蘇らせたかったんです。『交戦権はないよね、戦力もないよね』って言っているけど、自衛隊は厳然として存在している。この状況に穴を空けつつ、『交戦権を一部解除して、自衛隊を持ちます』と書くことによって、『9条2項の意味はこういうことだったのか』と欺瞞なく再認識してほしかったんです」

「ゴー宣道場」で発言する倉持麟太郎氏(2018年8月5日、東京都品川区で撮影)

 だが、交戦権を認めていない9条2項に、交戦権を一部解除する条文を追加することで、なぜその意味が再評価されることになるのだろうか? 「欺瞞的ではあるけれど約70年間、この9条2項を持って存続してきたこの国の法的安定性もあります。なので、2項を残しつつ、この改憲試案で『9条2項は死んでいたよね。でも、これならば蘇るよね』と両方の意義を伝えたかった。戦力と交戦権をきちんと認めることで、『やっぱ死んでたじゃん』と伝え、しかし、それらをきちんと縛ることで、『でも、戦力と交戦権は簡単には使えないよ』という規範として蘇る。これによって、護憲派にも改憲派(特に安倍加憲肯定派)にも矢を飛ばしたいんですよね。早速、それぞれの立場のいろんな人に怒られていますけど(笑)」  倉持氏も言っているように、安倍改憲はまだ潰えたわけでもなんでもない。そして、現行憲法にもさまざまな問題点がある。「一部でも交戦権を認める」と聞くと拒否反応を示す人が多いのも事実だが、立憲的改憲は「集団的自衛権が一部認められた現状の日米同盟下で、アメリカの侵略戦争に加担しないようにするためにはどうしたらいいか」「どのように立憲主義を貫徹し、権力の暴走を縛るか」という点から出発している。  この国の憲法はどうあるべきか。これは政治情勢に関わらず、不断の国民的議論が必要なテーマであることは間違いない。 取材・文・撮影/織田曜一郎(週刊SPA!)
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