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日雇い労働者の街「大阪・西成」からシンボルが消えた日

日雇い労働者の街「大阪・西成」からシンボルが消えた日

あいりん労働福祉センター

センター前では連日反対運動が起きたのだが、大きなトラブルもなく閉鎖されることになった

 大阪・西成に集う日雇い労働者たちに対して、長らく職業あっせんなどのサポートを行ってきた「あいりん労働福祉センター」が、4月に閉鎖された。反発する労働者と支援者から成る総勢100人が抗議活動を展開し、警察官や機動隊員およそ220人が動員される騒ぎとなった。  日中はホームレスや仕事にあぶれた労働者たち100人以上がひしめいていた同センター。彼らにとっては風雨を凌げる快適な居場所であり続けてきた。閉鎖の表向きの理由は老朽化による建て替えだが、付近には訪日外国人客向けの施設やリゾートホテルの建設も決まっており、センター閉鎖もそうした“西成浄化作戦”の一環と見られている。  だが、長らく現地で取材を行ってきた在阪の全国紙記者によれば、センターの閉鎖は根本的な“存在意義”も絡んでいるという。 「日雇い労働者の街と言っても、もう15年も前から日雇いの仕事はほぼゼロ。日雇い労働をあっせんするというセンターの機能は形骸化し、あぶれ手当(※日雇い労働者向けの失業保険)を出すだけの場所に成り果てていました。廃止まで秒読み状態のまま、ズルズルと続いていたのが実情なんですよ」  西成は日雇い仕事の減少と住人の高齢化に伴い、“福祉の街”になっているのが現状だ。 「ドヤと呼ばれる簡易宿泊所の住所で住民登録ができるようになり、生活保護も受給できるようになっています。泊まっている“住民”のほとんどは高齢の元日雇い労働者の老人です。一部ではドヤではなく、福祉マンションと呼ぶ動きもあります」(前出記者)  日雇いという最も立場の弱かった労働者たちは、高齢化でさらに弱い立場に立たされているのだ。
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センターの閉鎖は何を意味するのか
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