「ちょっと不幸なM気質」――サウナにハマる人の意外な共通点
――『お熱いのがお好き?』では、主人公の恋愛も描かれており、バーで「サウナが趣味」の男性と出会います。サウナ好きのお二人からして、サウナ好きの男性は“お好き”ですか?
大町:バーのマスターも、そこで出会う男性も、「サウナ好き男性の集合体」として描きました。サウナ好きの男性に対する「しゃらくせー」という気持ちを込めています。
まん:サウナ好きは鬱陶しいってこと?
大町:別に嫌いとかじゃないし、話も合うからいいなとは思うのですが、たとえばいきなりフィンランド行ったときの話とか、一日にサウナを二軒はしごするとか、度が過ぎるのには正直引いちゃいます。
まん:サウナ室の木材は何とか、「俺の知識すごいだろ」系のウンチクはきついかも。あと会話で専門用語を使うのも、なんかなーって感じはします。「水風呂がグルシン(シングル=10度未満)」とか「ととのい椅子(休憩をするときに座る椅子)がいくつある」とか。普通に「気持ちよかった」くらいの感想で十分。あ! でもサウナの温度と水風呂の温度は知りたい。
大町:でもまあ私も、「ロッキーサウナが」とか「ikiストーブが」とか言いがちなのでお互い様なところもあるのですが。「サウナ室の換気がどう」とか「ストーブの輻射熱がどう」とかは……。
まん:正直よくわかんないですよね。
大町:早口のオタクみたいにはならないように気をつけたいところです。サウナの話しかしないとか、知識勝負みたいなことはしたくない。
――サウナ好きの間でよく話題にあがるのが、「男湯」と「女湯」で“格差”があること。実際はどうなんでしょう?
まん:同じ銭湯なのに男性側のほうがサウナ室の温度が高かったり。
大町:多いですね、そういうところ。
まん:男性側だけに露天風呂があったりとか。男性側のほうが優遇されているなと感じる施設は多いです。
大町:女性だって熱いサウナに入りたい人多いのに。なんででしょう。
まん:サウナを社交場みたいにしている常連が多くて、そこで長話をするにはむしろぬるいほうがいい。熱さを求めていない。で、そういう常連にかぎって声が大きかったりするわけで、そうなると施設側も温度を上げにくいのかもしれない。
大町:そうなるともう格差が埋まることなんてないんでしょうね。
まん:サウナ好きの女性が満足できるような新しい施設ができてほしいです。もっとサウナが流行って、新規の女性客が増えたら変わるはず。もしくはサウナで井戸端会議しているババアどもが死ぬのを待つか……。
大町:死に待ち……。
――それでもお二人はサウナが好きで通っています。お二人にとってサウナとはどういったものなんでしょう?
まん:うーん、難しい。
大町:「救済」ですかね。小さくて確かな幸せがあるところ、です。
まん:確かに日ごろの嫌なことがあっても「ま、いっか」と思える幸せな場所ですね。
大町:ポジティブになれるんです。体が気持ちいいと前向きになれる。風邪をひいて弱っていると落ち込んでしまう、その逆です。
まん:私にとってのサウナは「浄化」です。ネイティブアメリカンの儀式に「スウェットロッジ」というものがあるんですが、小屋で汗をかくことで身を清める。それってサウナと同じだなって。もちろん、気持ちいいから通うのですが、神社に通うような気持ちでもあり、それは「浄化」されたいから。
大町:本場のフィンランドでも神聖な場ですもんね。
まん:こういうことを言っているとまた「スピってる」とか言われそう。でも、たとえ思い込みだとしても、「浄化してリセットできる場所がある」というだけで前向きになれるし、実際に私にとってのサウナはそういう場所なんです。
今回、対談を収録したのは新宿区大久保にある「ルビーパレス」、女性専用のサウナ施設として人気だ。サウナを好む女性が増えることにより、新たな女性専用施設が生まれ、そしてサウナは「男性のもの」から「みんなのもの」になる。ひとりのサウナ好きとして、これからのさらなる“ブームと定着”を心から願っている。
大町テラス●サウナと居酒屋をこよなく愛す漫画家。初の著書であるサウナ漫画『お熱いのがお好き?』(イースト・プレス)が好評発売中。『女性セブン』では『まにまに道草』を連載中
まんきつ●漫画家。2012年に始めたブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目され、2015年には自身初となる単行本『アル中ワンダーランド』(扶桑社)を刊行。サウナ漫画『湯遊ワンダーランド』(同)は全3巻が好評発売中
取材・文/高石智一 撮影/杉原洋平
『お熱いのがお好き?』 “私”をととのえる サウナ×水風呂! |
『湯遊ワンダーランド』 サウナ・水風呂・外気浴――それらをひたすら繰り返すだけ。 すると退屈で灰色だった毎日は、少しずつ熱を帯び色づきはじめた。 人気漫画家まんしゅうきつこ、お酒の次はサウナにハマる!? |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ