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理屈で行き詰まったら理屈を超えるしかない?

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第126回 カルティエ 六本木の国立新美術館で「カルティエ時の結晶」展が始まった。世界的な高級宝飾ブランドであるカルティエが、これまでにどういったものをモチーフにして、アクサセリーや時計を製作してきたのか、その創作の歴史を振り返る展示会となっている。  展示されている作品はヘビのブレスレットやオーキッド(蘭)のブローチといった動植物をモチーフにしたもの、中国の庭園風の置き時計やスフィンクスのネックレスといった世界各地の文化をモチーフにしたものなど様々だ。音声ガイドでは、「カルティエがモチーフにしたものを集めると世界を一周できる」と説明されていた。  特に面白かったのが「クラッシュ」という腕時計だ。この時計はベゼルが耳の形のように歪んでいる。この歪んだ腕時計は、クルマで踏み潰してしまった腕時計が工房に持ち込まれた時に生まれたという。このように発想や創造はゼロからではなく、すでにあるものをモチーフにすることで生まれるものだ。 「世の中にあるものを自分の仕事に生かす」というのはカルティエに限らず、誰でも真似できる発想だ。マジックテープはオナモミから生まれたし、アルキメデスの原理は湯船につかった時に発見された。自分の仕事というのは、自分以外の人や物に触れた時に見つかるものだ。  ヘビも蘭もスフィンクスもカルティエとは関係がない。その関係のないものをカルティエはアクセサリーや時計という自分の仕事に生かしている。言われてみれば当たり前のことだが、当たり前のことほど見過ごされるのは世の常だ。
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自分のことを一人で考えるのではなく…
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