挙動不審の人が店内にいたらマークするのは店員として当然だろう。キョロキョロして落ち着きがなかったり、店員をやたらと見てくることもそうだ。昔、筆者が働くコンビニにたまに来る女子高生がいた。学校帰りなのか制服姿だ。だが、いつもソワソワして落ち着きがなく、レジの死角に入ろうとする。 　ある日、いつものようにその女子高生がやってきた。筆者がレジで他の客を応対していると、店長の奥さんがバックルームから出てきて、女子高生を呼び止めて中まで引き入れた。 　筆者は、ああ、ついに万引きしたんだなと思った。店長の奥さんにも女子高生がカバンの中に商品を入れたという確信があったようだ。 　レジの対応を終えると、筆者も応援でバックルームに向かった。 　奥さんが「カバンの中を開けて下さい」と言うと、女子高生は抵抗することもなく素直にカバンを開けるが……何もない！ しまった！ 勘違いだったのだ。 　後から防犯ビデオで確認すると、女子高生がわざと万引きをする素振りをして何も入れなかったようにも見える。どちらにせよ、非常に良くないことだ。これは困った。 　冤罪だけでも大ごとなのに、相手は思春期の女のコだ。心を傷つけられたかもしれないし、後に大きなトラブルに発展するかもしれないと思った。よくあることは、後から親が怒鳴り込んでくることや訴えられることだ。 　だが結論から言えば、店長の奥さんが謝って済んだ。特に女子高生は何も言ってこず、問題にはならなかった。さらに不思議なことに、この女子高生はその後も何もなかったかのように週2回は店に来ていることだった。いったい、何だったのだろう……。