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新発売のPS2がまさしく水の泡 ボートの客にはヒラもSGも一緒<江戸川乞食のヤラれ日記S>

ファンファーレが鳴るたびに喜怒哀楽

 選手がレースに出走すれば必ず起きる喜怒哀楽。それは選手だけではなく客にも同じことが言える。もちろん、それは記念でも平場でも変わりなく、むしろ平場のほうにこそ、そんなドラマが多く繰り広げられているに違いない。  親の説教よりも聞いたレース開始を告げるファンファーレが鳴り響き、各艇一斉にピットから離れる。  この時の自分の買い目は、展示の気配がよかった村田孝雄とモーター上位の川原正明、どっちもまくり屋で江戸川一般戦なら格上扱いできる選手。  山根強が宣言通りにまくりを打てば酒井忠義が飛びついて共倒れ、空いた内側を村田孝雄がまくり差し。村田のまくり差しを残せれば林の2着目か、モーターパワーで押し切る川原正明とのアタマ競り。酒井すんなり逃げ切り展開なら2着は村田か林と見て4=5 4-3 抑えで1=4 1-3。あえて山根の差しは考えずに消しの一手。  待機行動は外側にイン志向の選手がおらず、ここはすんなり枠なりで折り合う。江戸川で見慣れた3対3スタイルの進入体勢があっさり決まり、各艇一斉にスタート。  3号艇林が少し遅れ、2号艇山根が宣言通り1号艇酒井にスリットほぼ同体からの強ツケマイを敢行、トップスタートの5号艇川原が村田の頭をおさえ、一気に山根の外を二段でまくる。川原に頭を押さえられた村田は、最初から狙っていたかのようにまくり差しのハンドルを入れる。 「ほぉおおおれ! 村田が行ったぁああああ!!」  スタンドに響く勝利の叫びと絶望的な溜息。おおかたの展開通り、酒井がツケマイに出た山根を張り飛ばし、山根はこの時点で勝負権喪失。空いた内側を、林貢をまくった村田がまくり差しで抜け出てそのままトップを確定させ、山根を掃除した酒井が2着で1周1Mを抜けてきた。  おそらくこのまま4-1で決まる、誰もがそう思っていた。 「おっしゃぁ、4-1なら3000両!! これでPS2にソフトも買えるぅぅぅぅ!!」  どうやら彼も村田から行っていたようで、4-1体勢でバックに抜けた瞬間、いままでヤラれていた鬱憤を晴らすかのごとき大絶叫。  普通ならこれで二人とも取れてめでたしめでたしなのだが、ここで競艇場あるあるが発動する。友人や、予想のうんちくを傾けた相手と一緒に打っていると、不思議と必ずどちらかあるいは両方の買い目が外れるという面白い結末。  それがここで発動してしまったのだ。1周1Mの張り逃げの時にでもペラが開いたのか、バックに出てからの酒井のモーターから伸びが消え、逆に3着を走っていた林に艇間をどんどん詰められていた。 「あうぅ~。林ぃ、遠慮してくれぇぇっ!!」
イラスト/ツキシモ

イラスト/ツキシモ

 そんな情けない声を出した彼のほうに向くと、……多少の脚色は入っているが、瞳孔が開き、口も半開き、ひざがガタガタいって卒倒寸前、そんな感じの姿に彼は4-3を買っていないことが確定で、これは迷わず法則発動の予感がした。結果は案の定、2周1Mで林に追いつかれた酒井が林とデッドヒートになり、ゴール寸前で4-3に変わりそのままゴール。二人のタイム差はわずか0.1秒であった。

11R優勝戦結果

1着 4 村田孝雄 4コース 0.18 2着 3 林  貢 3コース 0.20 3着 1 酒井忠義 1コース 0.19 4着 5 川原正明 5コース 0.10 5着 6 西村秀樹 6コース 0.18 6着 2 山根 強 2コース 0.16 連単 4-3 8770円 19番人気 連複 3-4 3080円 9番人気 決まり手 まくり差し 「あうぅ~。……◎○×▲△注…FLS転欠……。うひぃっ!」  着順確定のアナウンスと払戻金がスタンドに流れる中、彼は言葉にならない言葉をうめいていた。果たして4-1にいくら突っ込んだのかは知らないが、確かにそこには一発逆転に失敗して傷口をさらに広げたオケラがいた。スタート6秒でPS2+ソフト数本がほぼ確定していた彼は、それから2分もしないうちにそれらの購入が無期限延期になってしまったのだ。  ギャンブルである以上、勝ち負けは必ず存在し、そしてそれを避けて通ることはできない。もちろん勝ちだけはなく、負け方も楽しめなければギャンブルに手を出す資格はないと思う。次の江戸川開催初日。彼は何食わぬ顔をして1Rから堤防スタンドにいて、いつものように選手へヤジを飛ばしていた。 ※平成22(’10)年度以前の話題につき当時の名称にて表記しております ※本文中敬称略シナリオライター、演出家。親子二代のボートレース江戸川好きが高じて、一時期ボートレース関係のライターなどもしていた。現在絶賛開店休業中のボートレースサイトの扱いを思案中
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