更新日:2023年05月24日 15:06
お金

365日、毎日が博打。人気予想師・李正侑による競馬ノワールを連載開始<浦和桜花賞>

ブン屋は7万円を当てた俺の豪腕を覚えていた

 待ち合わせした喫茶店の喫煙スペースは、まるで現在のパンデミックすらフェイクニュースと言わんばかりの平常運転だった。  隣がマルチ商法で前後が暴力団か半グレかその取り巻き。  カンボジアの税関がどうとか、どこそこの3Dセキュアがどうだの、そういった雑音をシャットアウトするかのように俺はミルクを入れないミルクティーを啜る。 「どうもどうも、お会いするのは初めてでしたね。」  斜め後ろのマルチ小僧のクロージングに耳を立てているとブン屋のハマがひょっこり目の前の席に腰掛けていた。 「ええと、何かでやり取りしたことありましたか?」 「李くんあれだよほら。去年の夏前かなんかに李くんの予想を俺がメール貰ってネットに出たやつあっただろう?なんだっけか、あの二歳の馬かなんかの……」 「ああ、あの函館二歳Sの時の人か。確か日刊SPA!でしたっけ?」  俺は去年の夏の函館二歳Sの頃、今と同じように純ちゃんに言われて予想を書いたことがあったのを思い出した。  こうも上手くいくものかと思ったものだが、三連単7万馬券をわずか三頭指定でびしっと的中したのだった。  その年の暮れのG1で5着して、今ではすっかり重賞常連のプリンスリターンと原田和真騎手とのコンビが好きで、それ以上に可能性を感じていた俺は二桁人気ながら相手に抜擢してかなり儲かった記憶がある。  これは読者も儲かったんじゃないかなんて思っていたが、その話はそれっきりだったし、俺もまた日々に忙殺されてすっかり忘れていたようだ。  まあ忙殺もなにも毎日競馬に競輪と打ち散らかしているだけというのが正確な話だが。
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悪徳予想屋をおしおきした一件も覚えていた
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新宿・歌舞伎町を根城にするギャンブラー。競馬競輪、ボートにバカラと賭け事ならなんでもござれ。座右の銘は「給我一個機会,譲我在再一次証明自己」

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