更新日:2023年05月24日 15:33
仕事

コロナで営業停止に…フロリダ州の日本食店経営者が見た現実

緊急事態におけるアメリカの底力

コロナビール

コロナビールは売れ行きが落ちて安売りが行われている

 4月1日時点で、新型コロナウイルスの感染者数はアメリカ全体で約14万人、フロリダ州では約6700人と発表されている。しかし、アメリカでは医療保険に加入していないため病院を受診できない人も多く、実際の感染者数はこれよりもさらに多いと見られている。そしてこれからさらに増えていく可能性も否定できない。  しかし、このような過酷な状況の中で、田中さんは2つのことを改めて強く感じ取ることができたという。ひとつはアメリカの底力である。  スーパーでは日用品や食料品などが一時的に品薄になりはしたが、すぐに充分な量が供給されるようになった。1930年代に発生した世界恐慌はアメリカに食糧不足をも引き起こした。街には孤児が溢れ、大人も穴の空いた服を着て食糧配給所の列に並んだ。このときの教訓で緊急時になにをいちばんに優先すべきかということをよく理解しているのだろう。  そしてもうひとつ……。  アイアイ寿司はその後も注文のほとんど来ない状態が続いていた。これからいったいどうなってしまうのかという不安に押し潰されそうだった。が、そんな中、ひとりの常連客がやってきてテイクアウトで大量に注文した。そして商品を受け取ると、田中さんにこう言ったのである。 「また来るよ。この店は絶対に潰させないから」  一生忘れることのできない言葉だった。その日はその後もポツポツと注文が入った。彼女は溢れ出す涙を拭いながら寿司を作った。<取材・文/小林ていじ>
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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