アントワープ完全移籍が発表されたサッカー五輪代表・三好康児の見据える未来
2月下旬。小雨が舞うベルギー第二の都市、アントワープ。サッカーU-23日本代表MF三好康児(23歳)は、昨夏より所属するベルギー1部のロイヤル・アントワープの練習場で黙々とトレーニングに励んでいた。
ピッチには2m近いガタイのいい選手が揃い、167cmの三好はひと際小柄に見える。雨に加え、吹きすさぶ冷たい風。そして足元の緩いピッチ。悪条件がいくつも重なるなか、三好は時よりその大男たちの間をスルスルとすり抜け、自慢の左足を振り抜いていた。
ベルギーに移籍し、約半年が過ぎた。昨年11月下旬に痛めた右足首のケガもいえ、徐々に試合への出場時間も増やしてきていた三好を練習後に直撃した。
取材時点で出場12試合1得点(その後、出場を増やし3月25日時点で14試合出場1得点)。数字に手応えはまったく感じていないと話すものの、何かを悲観する様子はなく、三好の表情は明るかった。
「出場時間も得点も、全然足りないし、まったく思い通りにはいってません。最初に出たリーグ戦(9月15日、対アンデルレヒト戦 〇2-1)で決勝点を取ったり、その後のカップ戦(9月26日、対ロケレン戦 〇4-2)でも2点取れたり、入りはよかったんですけどね。その後少しずつ出場時間をもらえるようになってきたところで、ケガをしてしまって。やっぱりケガをしてしまうと、自分の価値を証明するのは難しいですから。こっちに来て半分くらいはケガしていたわけで、そこはもったいなかったなと素直に思います」
現在ベルギーリーグはレギュラーシーズンの最終節の1試合を残して新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中断を強いられているが、ロイヤル・アントワープは4位につけ、来季のチャンピオンズリーグ(以下CL)やヨーロッパリーグ(以下EL)出場につながる上位6チームによるプレーオフ1への進出を確定。また、ベルギーカップでもクラブ・ブルージュとともに決勝に駒を進めている(3月22日に予定されていた決勝は延期され、新たな日程は未定)。
三好は以前から海外移籍を希望していたというものの、ベルギーへの移籍はまったく想像していなかったと話す。実際にプレーして、ベルギーリーグにはどんな印象を持ったのだろうか。
「こっちのチームは組織的というより、とくに前線はスピードやパワーなど特徴を持った選手が多く、個人でバンバン行くみたいな。試合中もフリーなのに全然パスが出てこないでフラストレーションが溜まったりもしますよ(苦笑)。ただ、そのなかでいかに自分の特徴を出すかは常に考えていますし、いい意味でも悪い意味でも個人にフォーカスされやすいリーグなのかなとは思います。チャンスを掴めるかどうかは自分次第。プレーオフ1で頑張れば来季のCLやELにつながりますし、結果によっては一気にステップアップできる可能性もあると思っています」
初めての海外でのプレー。言葉や文化、宗教が異なるなか、苦労も少なくなかったはず。そんななか、やはり言葉の壁は大きかったとも話す。
「アントワープはオランダ語圏なんですが、チーム内は基本フランス語。ヨーロッパ系だけじゃなくアフリカ系の選手もいて、英語を話す人も多いですが、いろんな言葉が混ざっているというか(苦笑)。一番、大変だったのはケガをしたときで、ただでさえ英語が拙いのに医療用語なんてわからないじゃないですか。自分の経験上、ケガの状態はなんとなくわかっても、それをどう伝えるかはホントに難しかった。
たとえば、「少し違和感がある」とか「どこかが少し張ってる」とか微妙なニュアンスを伝えるのは難しくて「痛いか、痛くない」のどっちかになっちゃうみたいな(笑)。サッカーをする分には言葉は通じなくてもなんとかなりますが、ケガをしたときは困りましたね。
逆に学んだこと? そこはもういろんな人種、いろんな人がいるし、人としての許容範囲が広がりました。時間を守らないヤツがいれば、サッカーをしてても好き勝手にプレーするヤツが多いですからね(笑)」
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