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コロナに苦しむ都内の飲食店、廃業か営業強行か「感染拡大防止協力金は申請が複雑」

―[コロナ後の未来]―
 新型コロナウイルス感染拡大の長期化に備えて、政府は国民に対して「新しい生活様式」を取り入れるよう、呼びかけている。「もう以前の生活には戻れない」と言われているが、収束した後の世界はどう変わってしまうのか。
コロナ後の未来

4月3日より休業中の東京・中野にある老舗バー「ブリック」は、休業要請中の18日、営業を再開することなく、惜しまれつつも56年の歴史に幕を閉じた

人々の流れの変化によって都下や郊外の店の需要が増える

 14日、39県の緊急事態宣言解除が発表された。しかし「ナイトクラブやスナック、バーなど遊興施設の出入りは今後とも控えるように」という要請は変わっておらず、相変わらず「夜の飲食店」のひっ迫した状況は続いている。夜の営業からランチやテイクアウト・デリバリーに切り替えた店、資金繰りが立ち行かなくなりひっそり廃業した店などさまざまだ。  休業にしびれを切らし5月7日以降に営業を再開したという、都内の繁華街にあるバーの店主は「東京都の『感染拡大防止協力金』は書類が多く、申請が複雑だった。次回の申請はもうやめて、店を再開することにしました。しかし、この状況下では来店をためらう常連客も多く、売り上げは激減しています」と、ため息をついた。  フードジャーナリストの山路力也氏は、現在の夜の飲食店の経営面について次のように語った。 「飲食業界は、3、4か月分のキャッシュフローで経営を回している、いわゆる“自転車操業的”な店がほとんど。家賃や光熱費などの固定費をまかなうためには現金が必要なので、資金ショートの面でメンタルが折れてしまったオーナーもいます」
山路力也氏

山路力也氏

 今後の夜の飲食店はどう生き残るべきか、山路氏はこう提言する。 「数字的にコロナの収束が見えていればいいですが、今は感染拡大を抑えるしか対策がないのが現実。このままでは感染拡大の第2波が訪れ、同じことの繰り返しになりかねません。そのためには“正しい飲食店営業の仕方・利用の仕方”の新しい指標を設定し、実行すべき。また、再び休業要請が出されることがあれば、政府・自治体は休業と補償をセットにする必要もあると考えます」  今、都心部から人口が激減する一方、吉祥寺や三軒茶屋などの“生活圏”には人が溢れ、路面店では客の争奪戦が繰り広げられている。この状況から山路氏は、今後は“飲食店の常識”が大きく変わると分析した。 「渋谷や新宿の繁華街など、今までは“立地条件のよさ”も評価の一つでしたが、人の流れが生活圏に集中したことで、今後は都下や郊外の店の需要も増えるでしょう。また、この事態でテイクアウトを始めた飲食店も増加したため、消費者側の選択肢も広がった。常連客がいた店は有利で、不特定多数を相手にしていた店には厳しい、生存競争時代に突入するでしょう」  今は、行きつけの店の存続を祈ることしかできないのだろうか。 【山路力也氏】 フードジャーナリスト。ラーメン評論家。テレビ・雑誌・書籍・ウェブなど多方面で活躍するかたわら、飲食店のコンサルティングやアドバイス、プロデュースも精力的に行う <取材・文/週刊SPA!編集部> ※週刊SPA!5月19日発売号の特集「コロナ後の未来」より
週刊SPA!5/26号(5/19発売)

表紙の人/ 桜庭ななみ

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