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サイゼリヤがコロナ禍で「出前館」に踏み切った深刻事情

コロナ禍の勝ち組・マクドナルドからわかること

 そんなサイゼリヤが進む未来を予言する存在が、コロナ禍の飲食チェーン店の雄、マクドナルドです。  マクドナルドは、緊急事態宣言下でも株価は堅調に推移し、年初以来、高値を更新しています(6月15日時点)。  既存店売上高は、4月が前年同月比6.5%増、5月は前年同月比15.2%増と、二ヶ月連続プラス。客数は減少したものの、持ち帰りやドライブスルー、デリバリーの利用が増え、客単価が伸びていたのです。  実は、マクドナルドはコロナ以前から、持ち帰り需要への対応を進めていました。2019年12月期の決算説明会で、代表取締役社長兼CEO日色保(ひいろ・たもつ)氏は「現在は自社のデリバリーとUber Eatsへの外部委託を行っているが、この部分の拡大を進めていくことで、自宅・オフィスなどの需要も積極的に取り込んでいく」と述べています。  また、マクドナルドはスマホアプリを使って注文・決済ができる「モバイルオーダー」を2020年1月末に全国展開を完了しています。これは、来店前にスマートフォンのアプリで商品のご注文を完了することで、来店時に出来たての商品を受け取れるというものです。  これ、なんの需要に答えたものなの? と、サービス開始当初は疑問に思う人も少なくありませんでしたが、コロナ禍になり、その狙いがはっきりとわかりました。  キーワードは「家族」です。  注文する際に、自宅でゆっくりと時間をかけてメニューを選びたい。家族で過ごす時間が多かった緊急事態宣言下ではそんな家庭での需要が激増したのです。さらに、受取時には“三密”も避けられるため、こちらはPRポイントとして自社のイメージアップにつながりました。  こうした“店外需要”への早い対応が、現在は同社が持つ独自の強みに成長しています。  ドライブスルーも、注文から受け渡しまでのサービスの速さはもちろん、渋滞を解消するために注文する場所が2カ所に分かれている点はマクドナルドが率先して始めた施策です。  サイゼリヤの「まちがいさがし」のように、「コロナ禍でも、どう利益を伸ばすか?」という超難問を解ける飲食店だけが、今後生き残るのではないでしょうか。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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