更新日:2020年07月11日 14:22
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ラーメン屋の店名、なぜポエム?「雨は、やさしく」「バカみたいに愛してた」店主に聞く

業者も困る!?珍名ラーメン店

 ラーメン激戦区のひとつ、中野。昨年秋、ここに異彩を放つラーメン店が誕生した。その名も「ただいま、変身中」。ポエムではないが変わった名前で、これだけでは何屋なのかさえサッパリ分からないが、この店名は総料理長の坂さんがフランス料理出身であることに由来する。
牡蠣ラーメン

画像:「ただいま、変身中」の看板メニュー・「牡蠣ラーメン」

 坂さんは「ラーメンをフランス料理にガラッと変身させたい」と語る。たしかに同店の看板メニューである「牡蠣ラーメン」は、クリームソースのような白いスープに、バケットが乗った見た目もラーメンの域を超えている。味もフレンチのノウハウが詰まっており、かえしにまで牡蠣のエキスを濃縮させて使った濃厚な味わい。  たしかに、従来のラーメンから変身を遂げている。しかしなぜ「変身“中”」なのだろう。この点について坂さんは「決まった形にこだわらず、状況に合わせて味付けや麺を変化させている」という。常に高みを求める姿勢が、店名に込められているのだ。しかし、開業時にあったこんなエピソードも教えてくれた。「丼などを発注するときに、店名を聞かれて『ただいま、変身中です』というと、『じゃあ、お店の名前が決まってから連絡してくださいね』っていう業者さんとのやりとりが結構ありました(笑)」。

普通っぽい名前にも込められた想いが

 珍名であれば、名前に強い意志があるのは透けて見える。一方で、普通っぽいが解読できない店名にはどんな思いが込められているのだろう。高円寺に店を構える「じゃぐら」の千代田英司さんに話を聞いた。 「“じゃぐら”って言うのは、曲芸師やピエロのことなんですけど、彼らって大変な芸をしているのに、顔ではいつも楽しそうにしてますよね。だから俺らも、どんなに仕事が辛くてもお客様を喜ばせようと思って」とのこと。
 ラーメン屋の仕事で辛い部分については「うちは、10時間スープを炊き続けるんですよ。重い棒で豚骨をずっと叩き続けないといけない。特に夏なんかは、暑さでさらに本当の地獄ですね」と語ってくれた。  またこの名前にしてよかったこととして「スロットの“ジャグラー”を作っている北電子さんから正式なコラボオファーが来て、全国のパチンコ屋さんにラーメンを置けたりしました」と、店名が大きな仕事を呼ぶケースもあるようだ。終わりに同氏は「ピエロ云々は表向きの由来で、裏の理由はスロットのジャグラーが好きなんです(笑)」と、こっそり教えてくれた。辛い思いで10時間炊いた濃厚な豚骨スープを味わいに言ってみてはいかがだろう。  こうして見てみると、珍しい名前には思いを込めるにせよ込めないにせよ、それぞれの店のスタンスがしっかりと現れていることがわかった。ラーメンを味だけではなく店名まで楽しむのも、また一興かもしれない。<取材・文/Mr.tsubaking>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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