更新日:2021年11月05日 08:02
ライフ

パチンコの勝ち金で味わう1泊2万円の赤坂高級ラブホ/古谷経衡

イロハ正門

高級感漂うirohaの正門

第21回/東京・赤坂の高級ラブホを初体験

 先日、待ち時間を持て余したので人生で初めてパチンコ店に入った。魔が差したのである。右も左もわからないので、取り急ぎ一番近い椅子に座ってみる。パチンコ台の上部左側に千円札を入れると、銀玉が125個出てきた。これを右手でもってレバーを右側に適宜シフトさせると玉がはじかれていく。  カニさん、タコさん、カメさん、イルカさんなどの海洋動物の絵がぐるぐると回っていく。もう千円入れると、水着を着たギャルが「ラッキー」などと叫んで、カメさん、カニさん、イルカさんの絵が一直線に三つ合致する。すると大音量と共に何やら台が光って、別の排出口から銀玉がばらばらと出てくる。よくわからなかったので取り急ぎ右側のレバーをシフトさせ続けると、ギャルが「ラッキー」を繰り返す。  最初、1時間の暇つぶしだったところが、2時間たっても3時間たっても終わらない。そろそろ右手がつかれてきた。呼び出しボタンを押して店員を呼ぶと「今当たっているのでやめないほうがいいですよ」とアドバイスをもらう。結局3時間40分かかって、そろそろギャルが「ラッキー」とか言わなくなってきたので「もうやめたい」旨伝えると、何やら磁気性のカードのようなものが出てきた。これをカウンターにもっていってください、と言われる。  カウンターで磁気カードを渡すと、板チョコくらいの大きさのプラスチック板をたくさんもらった。「これはなんですか」と問うと、「それはお答えできないのです」という冷たい反応である。しかし「皆様についていけば分かります」という。仕方なくある中年男性を追尾していくと、店の裏に引き出しを備えた窓口のようなものがあり、男性の行為をまねしてその引き出しにプラスチック板を入れると23000円が出てきた。これが俗にいう「勝った」というやつであろうか?  パチンコは全然面白くなく、ただ疲労感が募るだけであったが、わずか数千円を費やして23000円なら、実質約2万円の「儲け」という事になろう。私は江戸っ子である(嘘である、本当は北海道出身)。したがって宵越しの銭は持たない主義である。ことにこういったあぶく銭はすぐに使ってしまうに限る。そこですわ私が思いついたのは高級ラブホへの逗留である。  この連載を読んでいただいている方ならわかるが、私は独りラブホテル、つまり独りでラブホを利用すること過去20年弱のプロである。これまでラブホに何百万円を費やしてきたかわからない。当然男が独りで泊まるのだからそれは男女のアベックのそれのような設備・雰囲気・備品を求めているわけではない。私の求めるラブホはまず価格第一である。しかしこうして、あぶく銭が2万円転がり込んだのだから、普段なら絶対泊まらないであろう高級ラブホにこれを有効活用するべきである-という案がむくと浮かんだのである。
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高級地帯に佇む隠れ家的ラブホ
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(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数

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