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日本の漫画まで、香港で禁書に? アグネスさんも紹介した漫画が、書店から消えた

『漫画香港デモ 激動!200日』、今後は禁書の可能性も

 7月に入り現地メディア「東方日報」は、国安法に抵触するのを恐れた一部の独立系書店が、この漫画を書棚から下ろし始めていると報じた。  さっそく記者も独立書店が集まる旺角を訪ねてみた。  まずは老舗の「R」書店。発売直後には店内に入ってすぐの売れ筋コーナーの真ん中に10冊以上が置かれていたが、今は見当たらない。カウンター越しに「日本人が描いた香港デモの漫画ありますか?」と店長に訊ねると、「ああ、あれね」と、カウンターの後ろの棚から、すぐに取り出してきた。それを購入し「店内の棚には置かないんですか?」と尋ねると、「国案法が施行されてしまったから、おおっぴらに陳列するのはちょっとねぇ…」と歯切れが悪い。ただ客から在庫を聞かれれば販売は行うという。  次の店に向かうと、国安法施行前と同じように平積みされている。ここでも店員に尋ねると「漫画の裏表紙に印刷されている『光復香港 時代革命』のスローガンが警察に目を付けられないか心配だね。しばらくは状況を見ながら販売を続けるか決めようと思っている」と答えた。他の店舗もほぼ同じような意見だった。
漫画専門店「G.GOAL CLUB」ではポストカードを封入し裏表紙のスローガン「光復香港 時代革命」を隠す苦肉の策が取られた

漫画専門店「G.GOAL CLUB」ではポストカードを封入し裏表紙のスローガン「光復香港 時代革命」を隠す苦肉の策が取られた

「G.GOAL CLUB」に行くと、店頭には各々シュリンクされた日本語版と中国語版が一緒に並べられて売られていた。発売から1週間で『漫画香港デモ 激動!200日』を400冊を売り上げた書店である。  しかしシュリンクされた1冊を手に取り裏返すとポストカードが挟み込まれ、「光復香港 時代革命」の文字が見えないように工夫されていた。店長に尋ねると「この本の販売を続けるために、『光復香港 時代革命』のスローガンが見えないようにと考えた苦肉の方法なんだ」と苦笑いしていた。  その後、7月30日に学生活動家4人が国安法で逮捕されると、独立系書店「突破書店」でも店頭から本書は消えていた。カウンターで訊ねると「ああ、あれね」と言って店の奥からわざわざ取り出してきた。「以前は棚の一番目立つ場所においてありましたよね。これも国案法の影響ですか?」と尋ねると、店員は「その件についてのコメントは勘弁してくれ」と言葉を濁す。  取り締まりが厳しくなると、陳列を続ける他店でもいずれ販売は中止になり、「禁書」となってしまうかもしれない。日本人の描いた漫画でさえも、国安法の前では取り締まりと逮捕の恐怖にさらされる。それが今の香港の現状なのだ。 <取材・文/門脇久志>
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