恋愛・結婚

おっさん酒場に集う“おひとりさま”女子の打算と千年帝国の野望

 独居老人の終の棲家、おっさんたちの吹き溜まりとも形容されるスナックに単身訪れ、長い期間常駐する女性客の存在。男にはいまいち理解できない飲み屋の七不思議の一つを、スナック考現学を探求する筆者が本音で解析。他人は自分を映す鏡…なのか、女たちの打算的な内面が、カウンターの中から見えてきた。

第31夜 女さかしい酒の道

「酒場の女」というと、苦労の影や悲哀の色を帯びて聞こえがちだが、実際は様々な人種が存在する。まぁ酒場の「中」で働いている人間たちは腹に一物脛に傷、半ば諦観にも似た気持ちで店に立っている者が多く居るが、「客」として日々酒に溺れている酒場の女たちは、目を見張るほどの器用さとタフネスさを振りかざして長期にわたって酒場を支配している。  一般的には、夜の商売をしている女は悪女と称されるが、酒場の様子を観察していると、お客の女たちこそまさに狡猾で小賢しい悪女に見えてくることがある。最たるものは、ショットバーや小洒落たバルではなく、お客の年齢層が高めのスナックや個人経営のこじんまりした居酒屋や大衆酒場に連日連夜訪れる類の女たちだ。  圧倒的に少ない女性客の来店は、スナックや居酒屋の常連客である中高年男性には大層喜ばれる。運が良ければ隣の席になることもできるし、酒に酔っているし、気軽に連絡先も交換できるし、その気になればカウンターや厨房を隔てた店員を口説くよりもだいぶハードルが低くなるからだろう(思い返せば実際わたしも、お客の立場であった頃のほうが色んな誘いを受けたし、カウンターに入った時には「店員になっちゃったの~?」とがっかりされもした)。三十路絡まり~四十代を多く占めるお客の彼女たちは、異常なほどにガードが緩い女であるという演出に長けている。

店内に千年帝国を築く女たち

「若いのに珍しいね」「こんなオッサンの溜まり場に」  酒場の男性たちが年下の女性客によく掛ける言葉だ。彼女たちには、それに対する魔法の言葉を持っている。 「わたし、おじさん好きなんですぅ~」  少し舌足らずな口調でそう言いながら愛想を振りまいて懐に忍び込み、酔えば初対面の相手にでもしなだれかかって身体を触ってみせる。男たちは希望を抱く。このまま持ち帰ってヤレるかもしれない、と。希望を抱いた男の次に出る台詞はだいたいこうだ。 「何か好きなもの食べなよ」「いいよ、会計俺と一緒で」。  ここまでの一連の流れをテンプレ化し、このやり方で十年、下手すると二十年近く、酒場の小さなコミュニティ内で千年帝国を築いている女たちは常に一定数いる。客の入れ替わりの少ない酒場では対抗馬の女性の出現率も低く、客たちはこぞって奢り、しかし誘いは巧みに躱されほとんどヤレることもなく、千年帝国はそうそう崩れない。
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「おじさんが好き」は嘘ではないけれど
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