更新日:2021年01月28日 08:17
ライフ

副業シェアハウスで成功した大阪の“元祖どつかれ屋”。ゴミ同然の物件を再生

シェアハウス

元キムチ工場をフルリノベーションしたシェアハウス

西成の元ドヤをアートなシェアハウスに

 そんな小嶌さんの6棟目になるシェアハウス「CRIB」が間もなくオープンする。シェアハウスのある場所は、全国的にも治安が悪い街として名をとどろかせている西成。そのなかでも「ドヤ街」と呼ばれる簡易ホテルや寄せ場が集中していたエリアだ。 「いってみれば家のないおっさんがひしめいている場所のど真ん中にシェアハウスあります。昔だったら女子は住めないような危険地帯です。このシェアハウスも元は40室もあるドヤで、とても大きな建物です。地主さんから月7万6000円(7年間限定の定期借家)という破格の値段で借りることができました」  小嶌さんは土地や建物を所有するわけではなく、借りた物件に大幅な改装を行いシェアハウスとして運営する。なんでも友人の投資家が巨大すぎて持て余していた物件を借り受けたそうだ。 「元はといえば旅館業の許可をとって、1泊1300円で運営されていました。ところが役所にナイショで2階建てを3階建てに違法増築していたのがバレて営業停止に。以来、長らくほったらかしにされていたようです。一番狭い部屋で1畳半程度、エアコンもない、いわゆるタコ部屋です。それを部屋数を半分に減らして、安くても住み心地の良い部屋に生まれ変わらせました」
ドヤ

違法営業のドヤは1泊1300円、1畳半から2畳程度の部屋を提供していた

 期間限定かつ、リノベーション工事と家具家電で1000万円の再生費用と、大きな手間とコストのかかる物件だが、小嶌さんはトタンの外壁をアートで飾り、遊び心をくわえたハウスに仕上げることを考案。 「大阪の著名なグラフィティ・アーティストのCASPERさんに依頼して、絵を描いてもらうことにしました。グラフィティ・アートとは、ストリート・アートとも呼ばれますが、スプレーを使って電車の車両や高架下の壁にペンキで描かれるアートです。こういう活動が家賃に響くかはわかりませんが、不動産の再生は街の再生にも繋がります。結果的に街にとっても良く作用すると信じています」  絵を描いてもらいたいと考えた小嶌さんが、CASPERさんに依頼したのはたまたまだが、すでに西成出身のHIP HOPアーティストのSHINGO★西成さんが総合プロデューサーを務める、グラフィティ・アートプロジェクト西成WAN(ウォールアートニッポン)に参加。西成の街をアートで盛り上げる活動をしている。
キャスパーさん

カラースプレーを使ってアートを仕上げるCASPERさん

外観をグラフィティで装飾

「外国人入居者も少なくないシェアハウスにとって、昨年は新型コロナウイルスの大きく影響を受けた年でもありました。住むところに困った人を相手に安かろう悪かろうの粗悪な住居を提供するのは簡単で儲かりますが、僕はそうではないビジネスの進め方をしたいのです」  かつてプロのキックボクサーでどつかれ屋をしていた男は、お金のない若者のくらしを“大家”として応援する。とはいえシェアハウス事業も甘くはない。関西のシェアハウスマーケットは『かぼちゃの馬車』が大量供給された東京に比べてマシとは言われているものの、競合物件も増えつつある。だからこそ、ただ生活するだけのスペースではないプラスアルファの魅力を持つシェアハウスを打ち出していくのが、経営努力として必要だということを感じさせられた。
CRIB

西成のシェアハウス「CRIB」。ビフォー

アフター

プロテストに合格した大学時代

学生プロ時代にはタイのスタジアムで試合も

小嶌大介氏 1975年、大阪生まれ。不動産投資家・マイホーム評論家。芸術系大学を卒業後、広告業界で約10年間グラフィックデザイナーとして勤務。2010年脱サラを目指し、手持ち50万円から不動産投資に挑戦。独自の目線と切り口で築古物件をブランディングし次々と高利回り物件に再生、蘇生するリノベデザイナーとして、業界で一目置かれる。所有物件28棟200室、年間満室収入8,500万円、平均利回り30%。近著に『持ち家で人生が変わった!最強の家探し』(プラチナ出版)がある。
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