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「駅前食堂」を引継ぐ洋食店。50年以上の歴史を支えるメニューと味付け

名物料理「オリエンタルライス」と「インディアンライス」

町洋食

中野さんはかつてABCを経て、イタリアンなどでも働いた経験を持つ。稲田義雄社長から電話をもらい、ABCに復帰した経緯がある

 創業後、間もなくして生まれた名物料理が「オリエンタルライス」と「インディアンライス」。これらもこの甘辛タレが味つけの主役だ。  オリエンタルライスは、ニンニクがたっぷり使われた豚バラ玉ネギ炒めのせご飯。そこにニラも加わり仕上げに卵黄がのせられる。  当時ニンニクは日本人にとって非日常の刺激的な食べ物であり「オリエンタルというネーミングは今で言うエスニックという感覚だったのでは」と正之さんは語る。  インディアンライスは一見、親子丼を思わせる卵とじのアタマがのったご飯もの。  別にカレー味というわけではないのだが、インドの家庭的な炒め物に使われるターメリックの黄色い色合いと卵の黄色を重ね合わせたイメージのネーミングという話も伝わっている。  確かにたっぷりと使われたピーマンが和風の卵とじとは一線を画する無国籍な味わいを奏でている。

ひと言で「何味」とは言えない、甘辛くてパンチの効いたタレ

町洋食

どこか食堂の面影を感じさせる店内レイアウト。安価かつボリューム感のあるメニューは多くのビジネスパーソンの胃袋を長年支えている

 これら一連の人気メニューに使われるタレは、前述の通りごく一般的な調味料・食材を合わせて作られているが、正之さんは「バランスの絶妙さには今でも唸る」と言う。  これには私も完全に同意だ。しかし、正之さんは「今となってはありふれた味なのかもしれないけど」とも語る。 「大手の食品メーカーもこういうのはいろんな種類作ってますもんね」と、冷静な見解だ。  確かにキンカ堂の時代、もしかしたら日本各地でこういう「これだけでさまざまな料理の味が決まる」和洋折衷的な合わせ調味料は同時発生的に作られたのかもしれない。そしてそれらは至るところで受け継がれ、今や日本の大衆的な味覚のベースの一つともなっている。  ひと言で「何味」とは言えない、甘辛くてパンチの効いたこの種の味わいは、昔からずっとあったような顔をした新しい日本食のスタンダードだ。
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看板メニュー「豚からし焼肉」
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キッチンABC西池袋店
東京都豊島区西池袋3-26-1
ランチ11~16時(ラストオーダー15時30分)、ディナー17~22時(ラストオーダー21時30分)、年末年始定休
取材した西池袋店の他に東池袋店、南大塚店、江古田店がある
(コロナの影響により営業時間はお店にご確認ください)

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