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政府の有識者会議における国体護持派の優勢は、菅内閣の意思だ/倉山満

政府の有識者会議など、最初から結論が決まっている

 大前提であるが、政府の有識者会議など、最初から結論が決まっている。誰を呼ぶかは政府の匙加減だ。つまり、この数字は、菅内閣の意思なのだ。一時期は女系論が大優勢だったのを考えると、隔世の感がある。  注目は、所功京都産業大学名誉教授だ。かつての女系論の総本山である。皇室問題で何か起きるたびに呼ばれる有識者会議の常連な上に、やたらと学があるので、始末におえない。日本中の真面目な保守の皆さんが「あの所先生が賛成……」と衝撃を受けたほど、影響力は大きい。  一方で、男系論の代表者の顔をして「乃公出でずんば」としゃしゃり出る御仁が、「皇室の尊さはY染色体遺伝子」などと言い出した暁には、私だって男系論の陣営にいるのは恥ずかしい。所氏の学識とY染色体遺伝子の議論を何も知らない人に見せて比較させれば、十人中九割が女系に賛成したくなるだろう。  だが、その所氏も、最近は風向きが変わっている。皇位継承に関しては、「男系の男子を優先し、男系の女子まで容認しておく」と答えている。男系男子優先は我が国の伝統であるし、男系の女子の皇位継承すなわち女帝は先例があるので問題はない。

女系論とは悠仁親王殿下がおわす以上、まったく不要の議論

 所氏も一時期は女系天皇容認しかないと突っ走っていたので、穏健な議論に着地した。理由としては、「長年の慣習は当分重視する必要があり、皇位継承の資格を今の段階で女系にまで拡大すれば、不安や混乱を招く恐れがある」と強調され、現時点で女系天皇に踏み込むのを明確に否定している。  旧皇族の復帰に関しては、「もし適任者があれば男子のない宮家の養子とすることも検討する」とする。 「適任者がいない」との議論に持ち込めるようにもしているが、とにもかくにも賛成に回った。この点でも一時期はかなり強硬に反対していたので、どうしたことかと思う。  いずれにせよ、女系論筆頭にして旧皇族の皇籍復帰への強硬な反対派だった所氏が、これである。ではどうして風向きが変わったかというと、言うまでもなく悠仁親王殿下の御生誕である。  女系論とは、皇室に親王殿下がいなくなる前提の議論であって、悠仁親王殿下がおわす以上は、まったくの不要の議論なのである。
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最優先は悠仁親王殿下が無事即位すること
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