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悠仁殿下がおわす以上、「女帝」「女系」は不要有害の論である/倉山満

「このままでは皇族が一人もいなくなる」という当時の焦燥感

 それまでは憲法第2条で定められた「皇位の世襲」とは男系に限ると解釈されてきた。簡単に確認できるところで、林修三法制局長官(昭和34年2月6日衆議院内閣委員会)、宇佐美毅宮内庁長官(昭和39年3月13日衆議院内閣委員会)、そして加藤紘一官房長官(平成4年4月7日参議院内閣委員会)と揃って「男系継承は伝統」との見解を繰り返していた。  当たり前の話だが、日本国憲法はもちろん、帝国憲法以前から、皇室は存在する。憲法典は皇室の存在を確認するだけであって、憲法典が皇室の存在を規定するのではない。  では、なぜ小泉内閣は日本の歴史を書き換えるような言動をとったのか。繰り返すが、「このままでは皇族が一人もいなくなる」との、当時の焦燥感を理解せねばなるまい。福田長官答弁の半年後の12月1日に愛子内親王殿下がお生まれになる。長官答弁当時は、雅子妃殿下(現・皇后陛下)が御懐妊中であった。もし女の子が生まれてから「女帝」「女系」を言い出したら反発を招きかねない。だから、その前に解釈変更を言い出したのだ。ちなみに福田長官は解釈変更を認めておらず、「従来から皇位の世襲には女系も含まれる」と強引に主張していたが、日本語が読める人間を騙せる論法ではない。

女系論のおかしなところは、先例も男系も飛ばして、直系だけで語るところだ

 そして、平成17(2005)年、小泉内閣に「皇室典範に関する有識者会議」が「女性天皇と女系天皇を容認する皇室典範の改正を」と答申を出した。  翌年元旦、秋篠宮ご夫妻は宮中歌会始でコウノトリの歌を詠まれた。当時、紀子妃殿下39歳。高齢出産を覚悟されての御歌だ。そして同年9月6日、悠仁親王殿下がお生まれになり、ご無事にお育ちになられている。  皇室を語る大原則は先例、男系、その後に直系だ。皇室は先例の世界であり、一度の例外もなく守られてきた先例が男系継承だ。どの男系が皇室の直系を継ぐかは、その後の話だ。女系論のおかしなところは、先例も男系も飛ばして、直系だけで語るところだ。
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悠仁殿下がおわす以上、「女帝」「女系」は不要有害の論だ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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