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好き勝手に命令する政府に日本を任せていて、何が上手くいくのか/倉山満

三流官庁の厚生労働省が! そもそも、厚労省は存在そのものが間違っている

言論ストロングスタイル/倉山満

5月18日、全国で初めて歯科医師によるワクチン接種を行った神奈川県大和市の集団接種会場の様子。河野太郎行政改革相によれば今後は「薬剤師も次の検討対象になる」という 写真/朝日新聞社

 しばしば、世界は分断されていると言われる。確かにコロナ禍は、人類を分断させた。コロナは、ペストやエボラ出血熱のように危険な伝染病か、ただの風邪か。ワクチンはコロナ禍を鎮める切り札か、科学を冒涜する暴挙か。などなど。  根本の事実認識が極端に異なるので、論争をすればするほど価値観の乖離は大きくなる。そして解決は遠のく。  だが、それでも共有できる、しなければならない事実はあるはずだ。事実と問題意識の共有こそが、この大混乱の解決となるのではないだろうか。  一例をあげる。  現在、ワクチンの打ち手が足りず、歯科医師に協力を仰いでいる。政府は、救急救命士や臨床検査技師にも範囲を拡大しようとの意向だ。これに異を唱える者は一人もおるまい。外国では短時間の研修で、民間人がボランティアでワクチン注射に従事する例もある。技術的には何の問題もないし、政権が「ワクチンの普及こそがコロナ禍を鎮める切り札」と見做し、主要野党も賛成している。政策の是非は議論の余地が無い。  さて、これが法律を変えることなく行われていることを、どれほどの人がご存じか。  医師法17条には、「医師でなければ、医業をなしてはならない。」とある。誰がどう読んでも、歯科医師が医業をするには、法改正が必要だ。ところが、厚労省の通達一本あるのみだ。日本歯科医師会のHPには、「新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種のための筋肉内注射の歯科医師による実施について(4月26日/厚生労働省医政局医事課、医政局歯科保健課、健康局予防接種室)」がある。  繰り返すが、政策の中身に関しては、議論の余地が無い。問題は、手続きだ。医師法17条の例外となる特例法を、「午前に衆議院、午後に参議院を通す。夕方から施行」でも構わないではないか。与野党で対立する余地が無いのだから、可能だ。その1日のロスなど何の問題も無い。  では、なぜそれをやらなかったか。  官僚が好き勝手に民間人に対して命令を下したいからだ。三流官庁の厚生労働省が!  そもそも、厚労省は存在そのものが間違っている。厚生省も労働省のいずれも、戦前の内務省に起源を持つ。そして仕事が増えすぎて、内務省の一部局では回らなくなったので、独立した官庁となった。ところが、橋本龍太郎という愚かな総理大臣が、その両省を統合した。上手くいくはずがない。  厚労省は三流官庁である。財務省のような超一流官庁、外務省や経済産業省のような一流官庁、あるいは内務省の「嫡流」を自任する総務省より格下である。それが、昨今の社会保障予算の増大で、二流官庁くらいには地位を向上させた。  政治家は選挙に落ちたくない。だから、人口も多く選挙に行く老人に媚びる。人口が少なく選挙に行かない若者にしわ寄せが及び、ますます老人の利権だけが守られる。かくして社会保障は無限大に増大する。厚労大臣になりたがる政治家も多いし、陳情は殺到する。
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法律的根拠も、科学的根拠もなく、好き勝手に命令する政府に日本を任せていて、何が上手くいくのか
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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