更新日:2021年08月28日 15:14
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「死ぬまでムチ打つぞ」タリバンに脅された日本人“恐怖の一夜”

タリバンが“怖い存在”というのは本当なのだろうか?

 アフガニスタンでは「殺されるかもしれない」という体験を何度もした。この国に住んでいる人々なら、そうしたことは日常茶飯事だろう。ところが当のアフガニスタン人はというと、「タリバンのおかげで平和になった」という声が多数だった。 “恐怖体験”を重ねた私からすると、意外ではあった。しかし現地の人びとは言わされているフシは感じなかった。素直にそう言っているようなのだ。
マドラサ(イスラム神学校)の建設現場での中村医師

マドラサ(イスラム神学校)の建設現場での中村医師

 現地人による支持(許容しているだけかもしれないが)に基づいたタリバン統治。これについては、私の独りよがりな考えではないようだ。というのも、長年アフガニスタンに滞在し、人道支援を続けた医師・中村哲さんが次のように語っているのだ。 「タリバンは訳が分からない狂信的集団のように言われますが、我々がアフガン国内に入ってみると全然違う。恐怖政治も言論統制もしていない。田舎を基盤とする政権で、いろいろな布告も今まであった慣習を明文化したという感じ。少なくとも農民・貧民層にはほとんど違和感はないようです」(2001年10月22日号『日経ビジネス』より)  確かに私も脅されはしたが、私が会ったタリバンの人々は暴力を振るうことは一切なかった。「怖くて狂信的」というイメージから、勝手に怖がっていたという気がしてならない。  しかし、その中村哲さんも2019年に現地で凶弾に倒れている。タリバンは怖い存在なのか、否か。狂信的なテロリストなのか、それとも地元の支持を受ける良き人たちなのか。彼らの正体はいったいどこにあるのだろうか――。 文・写真/西牟田靖(にしむた・やすし) ノンフィクション作家。1970年、大阪府生まれ。国境や家族などをテーマに執筆。タリバン政権時代の1998年、アフガニスタンを取材し、危険な目に。著書に『僕の見た「大日本帝国」』(情報センター出版局)『ニッポンの国境』(光文社新書)『本で床は抜けるのか』(中公文庫)『わが子に会えない』(PHP研究所)『中国の「爆速」成長を歩く』(イースト・プレス)など。
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