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「すべてのシーンが怖い」ホラーを超えた“未知の恐怖体験”はどうして生まれた?

観客からは「すべてのシーンが怖い」「人間の怖さをえぐる」と絶賛の声

“ドッペルゲンガー”の存在や全編に漂う不穏な空気感がジワジワとした恐怖を煽っていく同作。鑑賞した人々からは「新感覚すぎる!」「今までに見たことのないホラーといった声が多く聞かれ、派手な奇怪現象が起きる演出は少ないけれどすべてのシーンが怖く思えてくる」、「人間が抱える心の闇や怖さをえぐってくる。未体験の作品で面白かった」といった声がSNSに寄せられるなど、未知なる恐怖体験が大きな話題を博している。そんな同作でメガホンを取った入江悠監督にインタビューを慣行した。  公開中の映画『聖地X』を作るに至った経緯を教えていただけますでしょうか。 入江悠(以下、入江)「以前仕事をしたプロデューサーの方に『韓国で映画を撮ってみないか?』と言われたのが始まりです。韓国は旅行や映画祭で訪れた際にすごく魅力的なところだと思っていましたし、韓国映画がここ20年くらいずっと盛り上がりをみせているので、韓国の映画作りについて学んでみたい、知りたいという思いもあって引き受けました。  その中で『イキウメ』という劇団の舞台を題材にする話が出て。ドッペルゲンガーの存在が話の中核にあるんですが、『日本にいるはずの人物がどうして韓国に?』という不思議な設定にできるので“すごく面白くなりそうだな”と思ったんです」
入江悠監督

メガホンを取った入江悠監督

 韓国という日本とは違う風景が出てくることで、作品全体の不気味さが引き立てられているように感じました。そのあたりはイメージに合っていたんでしょうか。 入江「そうですね。日本とは少し違う街並みだったり外観だったりのおかげで、異質な空気というか、絶妙な違和感が出すことができてよかったですね」

日本と韓国との映画業界の労働環境の違い

 異例のオール韓国ロケとなりましたが良かったことなどはあるのでしょうか。 入江「なぜ韓国映画に面白い作品が多くなっているのかという理由を改めて知ることができたことは大きいですね」  具体的にはどのような点が日本と違うのでしょうか。 入江「キャストやスタッフを含めて、ちゃんとした労働環境のもとで作品が作られている点ですね。オフの日がしっかり用意されていたり、スケジュールに余裕があったりして、よりクリエイティブなモノが生まれやすい環境にあるなと感じました。そういった労働環境面の問題は日本映画も真剣に考えないといけない時代にきていると思いますね」  では、逆に日本映画の作り方と異なって難しかったのは、どんなことがあるのでしょうか。 入江「日本はスケジュール通りにこなしていくのでテンポが早いんですけど、韓国は比較的ゆったりしているところがあるので、当初はスタッフ間での齟齬がいくつかありましたね。ただ、最終的には同じ映画を作る者として、同じ熱量で一致団結して作品作りできる関係性になりました」
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