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政権交代を目指さない“枝野路線”。否定できない野党に未来はない/倉山満の政局速報

 10月末に実施された衆院選の結果を受けて辞任した枝野幸男氏の後任として選ばれたのは、候補者の中で最も若い泉健太氏。そんな泉氏が立憲民主党を立て直せるか否かは、「脱枝野路線」へ舵を切れるかだったと、日本近現代史の専門家である憲政史家・倉山満氏は語る(以下、倉山満氏による寄稿)。
泉健太

(画像:泉健太氏の公式サイトより)

「憲法違反!?」の声に撤回された国際線の新規予約停止要請

 相変わらず、自民党はグダグダだ。尾身ミクロン……じゃなかった、オミクロン株が流行ると聞くや、岸田文雄首相は「私は慎重だ!」と全世界を対象とした入国禁止。  しかし、これで大パニックに陥ったのが、このご時世にリスクをとって海外にいた人たち。いきなり帰国できなくなった。これは日本国憲法22条の「移動の自由」に違反。 第22条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。  憲法典には「移転の自由」と書かれてあるが同じ意味。そして帰国できないとなると滞在費がかかる。政府が補償しないとなると29条の財産権の侵害だ。 第29条  財産権は、これを侵してはならない。 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。  さすがに「これ、憲法違反じゃね?」との声が方々から出て、岸田首相は1日で撤回。やる前に政府の中で「それ、まずいよ」と言う人がいないのが今の日本政府。

政権担当能力を無くしている自民党

 その日本政府とは1955年以来のほとんどの時期で自民党のこと。つまり自民党が政権担当能力を無くしている。  自民党政府は、いまだにコロナ禍を収拾できていない。世界中たいていの国が「ワクチン打ったからマスクなんかしなくていい」とコロナなんか忘れているのに。日本を訪れた外国人は日本人が考えなしにマスクしているのを見て、「まだやってんだ」と驚く。日本なんて「コロナの死者0」の日すらあるのに、いったい何を目指しているのか。  自民党の無能、政権担当能力の欠如は言い出したらキリがないけど、じゃあ、なぜそんな自民党が許されるのか。代わる政党が無いから。  1955年に自民党が結成されてから、そのほとんどの期間で野党第一党が自民党より無能だった。歴代野党第一党は無能なだけでなく、マトモな野党が登場しようとするのを阻止してくれる。じゃあ、自民党が安泰に決まっている。

「いつか政権交代する」と声だけは大きい立憲民主党

 今の立憲民主党も例外ではない。  立憲民主党の結党は4年前。当時、自民党を脅かしていたのは小池百合子東京都知事。小池都知事は希望の党を結成。民主党の後裔の民進党(当時)は解党して合流することとなった。  しかし、小池党首は「排除します」と民進党の一部を入党させないと宣言。そうして排除された人たちが作ったのが立憲民主党。代表は枝野幸男。立民は事実上、「枝野の党」としてやってきた。  さて、その戦績は? 2017年 衆議院選挙。小池ブームの失速で野党第一党をキープ。 2019年 参議院選挙。最初の目論見通り、野党第一党をキープ。 2020年 東京都知事選。擁立した候補が2位。山本太郎より上。 2021年 衆議院選挙。14議席を減らし100議席を切る。野党第一党をキープ。  これを「枝野信者」は「全戦全勝」と評価する。要するに彼らの目的は野党第一党でいることであって、与党の自民党にとって代わることではない。それでいながら「明日とはいかないが、いつか政権交代する」と声だけは大きい。声が大きいだけでなく、本当に勝つそぶりを見せる。
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この期に及んで「枝野路線」を否定できない立憲民主党
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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