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埼玉に住むクルド人高校生の目線で描く、難民申請者の今

「移民」が確実に増え続ける中で

マイスモールランド

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会

――世界情勢の悪化もあって、クルド人難民の申請者は増えていますが、日本では一度難民申請をすれば、最終的な結果が出るまでに平均4年以上の期間が経過すると言われています。 川和田:日本語教育を受けて日本の社会を背負って働ける子どもたちは育ってきています。そして、大人たちは多くの解体現場を支えているという現実もあり、劇中に登場するこの家族たちのように、日本に根付いて暮らしている人たちはたくさんいます。 そうした状況の中で解決しなければならない問題は既に起きています。例えば、父母子どもの家族を例に取ると、お父さんは仕事をし、子ども達は学校へ通っているので、日本語の上達も早いのですが、お母さんは教育を受ける機会も就労の機会もないため、言語を習得するスピードが遅いという問題があります。 両親は、学校から子どもの持って来た手紙が読めず、また病院に掛かれないといった事態が起きている。お子さんの方が日本語の習得スピードが速いので、市役所に行くのは子どもと一緒に行くというケースもあります。 また、学校には行っていますが、来日したタイミングによっては、漢字が覚えられないなど学校の勉強についていけない子どもたちもいます。そして、いじめに遭っている子どもたちもいると耳にしました。 難民申請者だけではなく、技能実習制度や移民と呼ばれる人たちに関してもそうなのですが、彼らを取り巻く制度や環境はやはり排他的なものになっているという印象を受けます。 実際に日本社会に外国人は増え続けており、そのことは無視できません。彼らと一緒に快適に暮らしていける制度や社会的な風土を作らなくてはならない時期に来ていると思います。

誰もが生きやすい社会になるために

マイスモールランド

©︎2022「マイスモールランド」製作委員会

――そうした制度や社会的な風土を作るにあたって、妨げになることはどのようなことだと感じますか。 川和田:やはり意識の問題なのかと思います。 例えば、外国人であっても10年も暮らしていれば、日本語も母国語として流暢に話せるようになります。しかし、そこで「日本語が上手ですね」と言われると、悪気はないのかもしれませんが、やはり見た目で線引きされてしまうような感覚になるのではないでしょうか。 アメリカで英語を話していても「英語が上手ですね」とは言われません。そういう意味では日本は特殊な国なのかもしれません。 この映画の製作のために2ヶ月間ほどパリで暮らしてみたのですが、世代や人種によって暮らしている場所は異なるものの、フランス料理以外にもアジア系、アフリカ系など様々な種類のレストランがあり、そこに様々な人種の人たちが来ていました。特に若い世代は様々な人種の人たちが混じり合って暮らしていました。
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「いろんな人がいる」ことを知って
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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「マイスモールランド」
5月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
出演:嵐莉菜、奥平大兼、平泉成、藤井隆、池脇千鶴、アラシ・カーフィザデー リリ・カーフィザデー リオン・カーフィザデー、韓英恵、サヘル・ローズほか
監督・脚本:川和田恵真
主題歌:ROTH BART BARON 「N e w M o r n i n g」
企画:分福  制作プロダクション:AOI Pro. 共同制作:NHK  FILM-IN-EVOLUTION(日仏共同制作)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
製作:「マイスモールランド」製作委員会
配給:バンダイナムコアーツ
©︎2022「マイスモールランド」製作委員会
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