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「値上げ許容」発言で謝罪撤回に追いやられた黒田総裁の“功績”/倉山満

安倍元首相擁する「積極財政派」vs財務省の手先「消極財政派」

 金融緩和の必要性に政界で最も理解がある実力者は、安倍晋三元首相だろう。黒田総裁を日銀に押し込んだのが、安倍元首相なのだから。  現在、自民党の内部では、安倍元首相を擁する積極財政派と財務省の走狗である消極財政派が激しく争っている。その両者の争いの中で岸田首相は双方に気を使い、政府は「骨太の方針」をまとめた。文書を読むと、現時点では積極財政派が優勢であり、その主張が取り入れられたと読み取れる。曰く、「防衛費は大幅増額」「財政健全化は棚上げ」等々。だが、内情を精査すると、簡単には喜べない。  まず、消極財政派の主張は、別名「ガラパゴス経済学」と呼ばれる。世界のマトモな経済学の常識からかけ離れた主張を繰り返すからだ。たとえば、「税収の範囲でしか国家は支出してはならない」「景気回復など政策の優先順位で最も後回し」「防衛費を削れなければ、どの予算を削るのか」「デフレでもなんでも消費増税」「増税に賛成するなら補助金をくれてやる」など、語るに値しない。

予算目当てにすり寄る“積極財政派”議員たち

 では、積極財政派がマトモかと言うと、怪しい。そもそも金融緩和の意義を理解していない議員が圧倒的多数である。それどころか、自分の選挙区、後援会、支持団体に補助金をつけてくれるなら、平気で増税に賛成する。結局、積極財政派もマクロ経済学の視点で国民全体を豊かにしようとの発想はなく、限られた予算を分捕ってこられるのが優秀な政治家との固定観念にとらわれている議員たちなのだ。そこにMMT(現代貨幣理論)などという世界中で相手にされていない異端の経済理論まで混ざるから訳が分からない。  言ってしまえば、今は予算目当てに寄ってきているが、財務省が本気で圧力をかけた時に戦える政治家など何人もいない。これが、安倍元首相の周りの、積極財政派の実態だ。

金融緩和を止める気満々の岸田首相

 さて、今が金融緩和を止める時だろうか。黒田総裁はデフレ脱却が完全でないと発信しているし、来年3月の任期切れまでは金融緩和を続けるだろう。  では、その次の総裁は? 岸田首相は既に金融緩和を止める気満々だ。  さて、国民はどうすべきか?
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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