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既存政党がキワモノ政党から学ぶべきこと<著述家・菅野完氏>

〝キワモノ〟たちが既存政治勢力を凌駕する

 もっとも参院選とは常にこういう選挙であったと言えなくもない。昭和の昔の全国区選挙時代も、非拘束名簿方式の比例代表制となった平成以降も、選挙区以外の参院選は、「目立ったもの勝ち」「極端なことを言ったもの勝ち」といった側面が常につきまとってきた。  そうして当選した〝キワモノ〟候補者たちはやがて国会に登場し、明治以来の国会の伝統や政治手続きの堅牢さに直面することになる。あるものは〝キワモノ〟であり続けようとし無謀にも議会の伝統や手続きに挑戦することで、無様な討死の姿を晒す。そしてあるものは、順応しきってしまい〝キワモノ〟であることを捨ててしまう。いずれにせよ行き着く先は、〝キワモノ〟だからこそ投票してくれた支持者・有権者に愛想を尽かされるという結末だ。  そして前回の選挙で〝キワモノ〟を支持した有権者は、次の選挙で違う〝キワモノ〟を支持し、うつろい続ける。現に、2019年の参院選でれいわを必死に応援したボランティアが、今回の選挙では参政党に夢中になっている姿は、随所で目撃されている。選挙区以外の参院選の選挙制度が歪であり、「キワモノが勝つ」風潮がある以上、こうした光景は、これまで何十年も繰り返されてきたし、今後も繰り返されるだろう。  しかし問題は、こうした〝キワモノ〟候補者とそれを支持する有権者が、近年とみに増えてきたという現実だ。前述のように今回の参議院選挙では、参政党は比例で3議席を獲得することさえ視野に入っている。前回参院選から凋落したとはいえ、れいわ新選組も比例1議席は固い。NHK党はもはや崩壊したに等しく議席確保はかなわないだろうが、それでも、れいわと参政党の〝キワモノ〟2党で計4議席獲得さえありうる情勢だ。前回参院選における国民民主党や共産党の獲得議席と何ら遜色のない数字である。とうとう〝キワモノ〟政治勢力が、老舗既存政党を凌駕する時代がやってきたのだ。  この現実を、嘆かわしい風潮と処理してしまうことは厳に慎むべきことだろう。いかに〝キワモノ〟と言えどもそれは厳粛なる有権者の審判だ。それに、〝キワモノ〟たちが既存政治勢力を凌駕するのは、それだけ既存の政治のありかたが、多数の有権者に愛想を尽かされている証左に他ならない。  言い換えれば、〝キワモノ〟ずきの有権者からしても、既存の政治勢力は、旬の過ぎた(当世風に言えば「オワコン」の)〝古臭いキワモノ〟とみなされているということだ。

投票したい政党がない

 前述のように参政党の主義主張は、陰謀論を含んだ荒唐無稽なものが多い。さらに言えば、論評に値いするような個別具体的な政策など無いに等しい。どう考えても議席獲得後、参政党が、国会議論についてこれるだけの素養があるとは思えない。おそらく国会でケレンみの多い動きをして鼻を膨らませるのが関の山だろう。それを支持してしまう有権者も同様。確かに、参政党もその支持者も、知識もなく、日本の議会制度が明治以降曲がりなりにも100年以上の歳月をかけて磨き上げてきた、議会の伝統や政治手続きの堅牢さになど何の理解もないであろう。  しかしこういう人たちも有権者なのである。いや、こういう人たちこそ、他のどんな有権者よりも大切な有権者だと言うべきだろう。政権選択選挙でもない参院選で、しかもあまりにも巨大な与党を戴きながら迎える無風の参院選で、熱心に政治活動を行い、街頭演説に足繁く通う有権者たちだ。  そう考えると、この種の人々は、決して掃いて捨てる存在ではなく、極めて貴重な有権者層であることがわかるだろう。こうした層が、参政党やれいわやNHK党などの〝キワモノ〟政治集団に吸い寄せられていくのは、〝キワモノ〟の方が詐術を使うからではない。何か機会さえあればここまで熱心に政治参画する人々を、既存政党の方が掬い上げられていないのだ。  参政党の街頭演説は極めてシステマティックに行われるのが特徴だ。街頭演説の裏方として働くスタッフ各位の勤勉さと有能さには舌を巻くものがある。荒唐無稽な主張を詐欺師めいた話術でまくしたてる下品な候補者たちにくらべると、裏方のスタッフのほうがその誠実さといい有能さといい政治家にふさわしいのではないかと思えるほどだ。  そのスタッフ各位はみな、参政党のシンボルカラーであるオレンジ色のTシャツを着用している。そのTシャツの背中にはこう書かれている。 「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」  既存政党各位が、参政党のような政治集団を見下すのは無理からぬことであろうし、正しくもあろう。しかし足蹴にするまえに、まずはあのTシャツの文言を、いちど噛み締めてみるべきではないか。 <文/菅野完 初出:月刊日本7月号>)
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