ニュース

参政党はトンデモではない。振り切ったトンデモだ/倉山満の政局速報

私が参政党の関係者と思われてしまう理由

 今回、参議院に議席を得たのは参政党のボードメンバーで事務局長の神谷宗幣。私が彼に最初に出会ったのは、2012年の1月。その頃の彼は、吹田市議会議員だった。年は私より4歳下。当時、「龍馬プロジェクト」という全国の地方議員を組織、その会長をしていた。私は「龍馬プロジェクト」に講演で呼ばれたのを皮切りに、深くかかわるようになった。「龍馬プロジェクト」は超党派の保守系議員の集まりで、その年12月の総選挙で当選することになる大岡敏孝現環境副大臣(自民党で当選)や杉田水脈衆議院議員(この時はみんなの党で当選)、長野恭紘別府市長もいた。  神谷は自民党から出馬するも落選。保守的な教養を広めようと、インターネットテレビ局のCGS(チャンネルグランドストラテジー)を開局した。立ち上げの1年、相当に手伝った。そもそもCGSの名付け親が私であるし、ほとんどの番組の企画も私が考え、出演者もブッキングした。私自身の番組は「じっくり学ぼう!日本近現代史」で、最初は週6本の配信。さすがに疲れるので、本数を減らしたが……。私が参政党の関係者と思われるのは、神谷が、この番組の内容に基づいて発信するからだろうが。番組制作に際しての神谷の依頼は「グローバリズムに対抗できる日本人の歴史観が確立できるような番組を」「ペリーやアヘン戦争以来の日本の近代史」だったが、「では、ザビエルから始めましょう」と長期シリーズになった。ザビエルからはじめて、小泉純一郎まで来たところで終わらせた。2年目以降は、呼ばれた時にだけゲスト出演していた。

参政党は当初、市議会議員選挙でも勝てない政治団体にすぎなかった

 神谷は自分の会社のCGSをイシキカイカクと改称、講演・動画その他販売などで経営していたようだ。かなりの高額商品もある。その間に大阪府議選に無所属で出馬して大敗しているが、詳しい事情は知らない。  疎遠になっても忘れたころに仕事の依頼が来るのだが、そんなある日、何かの打ち合わせで神谷と二人で飲んでいた時に「政党を作りたい」を相談された。本気かと思ったが、本気だった。神谷には最初に出会った時から語っていた「近代政党」についてレクした。  前近代政党とは、議員の集まりである政党のことだ。派閥の談合によって、運営される。それに対して近代政党とは、綱領・組織・議員の三要素で構成される。党員全員が共有する綱領がある。党首の下に強力な事務局が存在する。理念に基づく国民に政策を訴え、党員を増やす。当然、資金も集める。その党員が活動を拡大し、議員を当選させる。明確な党首がいないまま選挙戦に望んだ以外は、ここで語った通りの近代政党の手法の選挙戦を行った。  神谷は事務局長の立場でボードメンバーを組織した。初期のボードメンバーは神谷の他、渡瀬裕哉早稲田大学招聘研究員、YouTuberのKAZUYA、元衆議院議員の松田学、元日本共産党員が売りの評論家の篠原常一郎。当初は市議会議員選挙でも勝てない政治団体にすぎなかった。

ネットワークビジネスに対する甘すぎる認識、米大統領選における目に余る言説

ちなみに私は、ネットワークビジネスに対する神谷の態度が甘すぎると、参政党(正確には当初はDIYと名乗っていた)には、はっきりと参加を拒否した。私が参加すると事前に告知されていたようだが、後で知った。  その後、アメリカ大統領選挙で、渡瀬・KAZUYAと篠原の路線が対立。3人ともボードメンバーから身を引いている。  残ったボードメンバーは、神谷と松田。ここに科学者の武田邦彦、アカオアルミ会長の赤尾由美、歯科医の吉野敏明が新たなボードメンバーに加わった。党員の通称は「ゴレンジャー」とか。  一般に知名度があるのは、テレビタレントとしても活躍している武田くらいか。武田と吉野は一面識もない。もちろん武田の事は知っているが、吉野は参政党の件で初めて知った。  松田は、元大蔵官僚で、次世代の党代議士の時、お世話になった。温厚な人物である。赤尾は、有名右翼活動家の赤尾敏の姪。本業は1円玉を一手に作る会社を継いだ実業家で、借金100億円を完済したとか。新しい歴史教科書でいっしょに理事を務めたこともある。
次のページ
参政党はいいこと“も”言っているにすぎない
1
2
3
4
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

噓だらけの日本古代史噓だらけの日本古代史

ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作は、日本の神話から平安時代までの嘘を暴く!


記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ