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旧統一教会との関係をごまかし続ける自民議員。「知らなかった」ワケがない

安倍元首相が、昨年9月の抗議文をスルーしなければ…

臨時国会初日の8月3日、井上義行参院議員は国会議事堂正門には姿を現さなかった

臨時国会初日の8月3日、井上義行参院議員は国会議事堂正門には姿を現さなかった

 そこで臨時国会初日の8月3日、筆者は国会議事堂正門で井上氏を待ち続けた。当選した参院議員が抱負を語ることが多いためだが、井上氏が姿を現すことはなかった。別の入り口から登院していたのだ。  そして同日午前に「信徒ではなく賛同会員」と再び強調するコメントを発表した。「家庭教育支援の推進」など井上氏が掲げる政策に対して、旧統一教会から賛同を得られたと説明。一方、議員辞職については否定した。  十分な説明責任を果たしているとは言い難い井上氏だが、自民党と統一教会の関係について精力的な発信をするひろゆき氏は先の記事で、政治家が取り組むべき緊急課題を次のように指し示していた。 「容疑者の家庭が崩壊した統一教会の活動も、今まで弁護士が団体を作って抗議しているのに国は何も手を打っていませんでした。なので、安倍元首相の無念を晴らすためにも、カルト宗教が日本人を喰い物にしているのを止めるべきだと思う」(ひろゆき氏)  まさに正論だ。旧統一教会の高額献金(金銭的搾取)被害に取り組んできたのが「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(略称「全国弁連」)で、安倍元首相が旧統一教会の友好団体のイベントに祝辞を送った5日後の去年9月17日、安倍氏宛に公開抗議文を送っていた。  これを重く受け止めてカルト規制に乗り出していれば、銃撃事件は避けられたのは確実。自民党最大派閥・清和会(安倍派)会長だった安倍元首相がもし声をあげていれば、岸田政権(首相)を動かすことは十分可能だった。安倍元首相がスルーしてしまった公開抗議文は、こんな内容だった。 「安倍元首相が、統一教会やそのダミー組織のひとつである天宙平和連合(UPF)などのイベントにメッセージを発信することを繰り返し、特に昨年9月12日の『神統一韓国のためのTHINK TANK2022希望前進大会』(UPFのWEB集会)でビデオメッセージを主催者に送り、その中で文鮮明教祖(2012年死去)の後継の教祖・韓鶴子氏に『敬意を表します』と述べたことは、統一教会のために人生や家庭を崩壊あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとってたいへんな衝撃でしたし、当会としても厳重な抗議をしてきたところです」  この「安倍元首相のビデオメッセージ」はネット上で視聴可能で、山上徹也容疑者も視聴したと報じられていたものだった。先の全国弁連の代表世話人の山口広弁護士は7月12日の記者会見で、こんな補足説明をしていた。 「安倍先生にも他の政治家にも、何回も『統一教会の社会悪を考えたならば、反社会的団体である統一教会にエールを送るような行為はやめていただきたい。どんなに被害者が悲しむとか苦しむのか。しかも新しい被害者が、それによってまた生み出されかねないことを政治家としては配慮いただきたい』と繰り返しお願いしてまいりました」  自民党の危機管理能力の欠如が露わになる。安倍元首相の祝辞が山上容疑者のような旧統一協会の被害者の恨みを募らせるリスクについて、誰一人として警告しなかったに違いないからだ。銃撃事件後も「安倍元首相に『ビデオメッセージ送付を謝罪したうえで、カルト宗教規制に取り組みましょう』と勧めるべきでした」と懺悔する議員が名乗りを上げることもない。

旧統一教会は政治家との関係強化で規制を乗り切ろうとした?

 なぜカルト教団を野放しにしたのか。7月12日、全国弁連の記者会見に同席した渡辺博弁護士は、「政界工作が背景にあるのではないか」と見ていた。2009年に信者2名が懲役刑となったことに対し、統一教会の責任者は政治家との関係強化で乗り切ろうと機関誌で述べていたというのだ。 「『政治家との繋がりが弱かったから警察の摘発を受けた。今後は、政治家と一生懸命繋がっていかなきゃいけない』というのが彼らの反省でした。(中略) 統一教会の被害者にとっては『政治家との繋がりがあるから、警察がきちんとした捜査をしてくれない』というような思いがずっとあると思う。私どもにもある」(渡辺弁護士)  2012年12月の第二次安倍政権発足で、こんな変化も起きたという。 「安倍政権になってから若手の政治家たちが統一教会のさまざまなイベントに平気で出席するようになった。それまでは政治家が参加しても伏せていたが、最近は若手の政治家が大手を振って参加してコメントをするようになった」(山口弁護士)  旧統一教会は2009年の反省を元に政治家との関係強化に取り組んで成功を収め、自民党への選挙支援の見返りに高額献金(金銭的搾取)を招く霊感商法への規制強化を免れてきたように見えるのだ。
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安倍派事務方トップの西村氏も井上議員の集会参加を「知らない」
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ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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