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ウクライナ情勢に対して“暢気すぎる”日本人がすべきこと/倉山満

ウクライナ情勢に対して日本人は暢気すぎる

 毎日、命懸けの戦いを繰り返しているウクライナ人に比べ、日本人はずいぶんと暢気なものだ。いまだに「なぜウクライナとロシアの戦争は終わらないのか」などと論じ合っている。では、この戦いを終わらせたい国はいるのか?  第一に、ウクライナ。侵略された側のウクライナに選択権は無い。ただ侵略者を押し返し、奪われた領土を取り返すだけだ。実は、ウクライナは戦争目的を達している。当初の戦争目的は、「強大なロシアの侵略から祖国を防衛する」だった。それが予想外の善戦。首都キーウから押し返し、ゼレンスキー政権は顕在だ。むしろ目的は上方修正、「どこまで取り返せるか」が戦争目的となっている。この状況でウクライナの方から和平を言い出す理由がない。  第二に、NATO(北大西洋条約機構)。ウクライナが戦えるのは、NATOが支援しているからだ。NATOは無限大の支援が可能だから、その気があればウクライナは永遠に戦える。本欄では開戦前から指摘したが、ウクライナはNATOの盾なのだ。それが思わぬ大善戦で、「ロシアに対する嫌がらせの猟犬」となった。支援に前のめりの米英加と腰が引けている仏独伊の温度差があるが、NATOとしての意志は決まっている。ロシアの力を削る! 今この瞬間に和平を言い出す動機がない。

ロシアから和平を言い出す利益はない

 第三に、ロシア。侵略の張本人だ。戦いをやめるのは、強い方の権利だ。だが、一度始めた侵略を簡単にやめてはメンツが立たない。仮にロシアの独裁者のウラジーミル・プーチンの気が変わって(そういうことは歴史上、往々にある)、「今すぐ撤退せよ」と言い出したとする。しかし、純粋に軍事的に考えても、撤退戦ほど難しい戦いは無い。また政治的にも、今までプーチンを支えてきた勢力が離反してより強硬な政権が成立する可能性すらある。そもそも、今まで一方的にリンチして殴ってきた虐めっ子に、殴り返されて尻もちをついた状態だ。虐めっ子にとって虐めていた相手と対等の地位に落ちるほどの屈辱は無い。基本的には、ロシアから和平を言い出す利益がない。  ただ、プーチンは報道管制の達人だ。ロシア国内には「単なる特殊軍事作戦」としか報じず、一部インテリはともかく、多数のロシア人は大それた戦争とは思っていない。今回の苦戦でプーチンの求心力が下がっている訳ではない。  では、プーチンが強権を発動して和平に向かうとしよう。実は外的要因によって、ロシアは和平を言い出せないのだ。
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戦争が続き、米欧のロシア叩きが強まるほど、中国依存が高まる。中国は笑いが止まらない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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