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文春砲を受けた黒岩知事が圧勝した理由。「神奈川ならではの事情」が背景に

政令指定都市が3市あるのは神奈川だけ

黒岩祐治氏

選挙中に『週刊文春』が黒岩候補の女性スキャンダルを報道。しかし、情勢に大きな変化は見られなかった

4月9日の投開票日、NHKは投票を締め切った20時と同時に黒岩候補の当確を打ちました。黒岩候補は神奈川県知事選を圧勝したことになり、スキャンダル報道後も選挙情勢に大きな変化は見られなかったことが窺えます。なぜでしょうか? 考えられる理由はいくつかありますが、神奈川県という地域性にも理由がありそうです。神奈川県の人口は約921万6000人ですが、そのうち横浜市が約376万5000人、川崎市が約153万8000人、相模原市が約72万4000人です。これら3市は政令指定都市であり、神奈川県と同等の権限を有しています。つまり、神奈川県知事と同じレベルの権限を有する市長が県内に3人いるのです。同一府県内に政令指定都市が3つあるのは神奈川県だけです。 そうした状況だけでも神奈川県知事の権限が限定的になってしまうわけですが、とりわけ横浜市は日本でもっとも人口が多い基礎自治体です。そのため、横浜市長の存在感・影響力は神奈川県知事と比肩します。

神奈川県よりも横浜市の方が格上?

また、横浜市は神奈川県内の一自治体ですが、職員や議員、市民の間に神奈川県の下部組織という意識はありません。それを体現しているのが、市議会の名称です。 地方自治法は、市に置かれる地方議会は「市議会」という名称に定めています。地方自治法上では横浜市議会という名称ですが、横浜市には慣例的に「市会」と呼ぶ習わしが隠然と残っています。 こうしたところからも分かるように、歴史的にも神奈川県よりも横浜市の方が格上という風潮があるのです。そのため、横浜市長選は毎回のように多彩な立候補者が揃い、盛り上がりを見せます。
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徐々に「国と地方が対等な関係」に
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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