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「一度舐められた首相」が今後、思うがままの人事を行えるのか/倉山満

茂木敏充幹事長も麻生太郎副総裁もこぞって反対

 こうした政治の定石を無視した時期ハズレの解散風に、岸田政権の主流派は総じて反対だった。総裁派閥の岸田派は第四派閥にすぎない。第二派閥の茂木派と第三派閥の麻生派が支える。ところが、領袖の茂木敏充幹事長と麻生太郎副総裁がこぞって反対との声ばかりが聞こえてきた。さらに、「安倍晋三元首相の一周忌に合わせて投票日」との観測も流れてきたが、当の最大派閥の安倍派は「静かに迎えさせてほしい」と難色を示していた。  さらに連立与党の公明党が、明らかに嫌がっていた。山口那津男代表に至っては「受けて立つ」などと、およそ与党党首の発言とは思えない身構え方だった。そらそうだろう。選挙区調整をめぐり、不協和音を拡大するような発信ばかりが飛んでいた。あげく自民党からは、「連立解消」にまで言及される始末。25年も連立を組み、野党の3年半も連れ添ってくれた同盟政党を、弊履の如く捨て去って大丈夫か。特に、史上最長政権となった安倍内閣の8年間など、創価学会公明党の支援の賜物ではないのか。岸田首相は、創価学会公明党を抜きにして選挙に勝てると思っているのか。この点は、週刊SPA!6月13日号で詳しく書いた。

第四派閥の「一度舐められた首相」にできるのか

 とにもかくにも、岸田首相は解散しなかった。次は早ければ秋にでも衆議院を解散するとの観測もあるが、果たして可能だろうか。  秋に岸田内閣の支持率が低ければ、主流派の面々は解散阻止に動き、燎原の火の如く自民党に反対論が広がるだろう。誰も選挙に勝てない首相の下で戦いたくないからだ。何より、「説得すれば岸田首相は解散を思いとどまる」と今回の騒動で知れ渡ってしまった。  仮に内閣改造を行うにしても、岸田政権を支える茂木派と麻生派は、好き勝手な要求をするだろう。それに安倍派も乗じるに決まっている。自民党総裁選は、必ず他派閥と連合しなければ勝てない。第四派閥の「一度舐められた首相」が、大派閥の要求に抗し、思うがままの人事を行えるのか。今回の騒動で、岸田首相は自分で新たな関門を設けてしまった。
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岸田首相が「日本を大国に戻す」との意思を持っているなら、時期ハズレの解散でもなんでもやりきればいい
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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