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「1人転職させて300万円」存在しない“おとり求人広告”で釣る、悪質な派遣業者を追跡

行政も追いつけていない実態

 職業選択の自由を保証する目的で制定された「職業安定法​​第65条8号」によれば、「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者」には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する旨が規定されている。  厚生労働省の担当者は「悪意を持って虚偽の広告を掲載した場合には、厚労省や厚労省の地方部局である労働局が職業紹介事業者の摘発から、会社名などを厚労省HPで公開しています」と話す。  ところが、とある県の労働局に勤めるという佐藤たかおさん(仮名・30歳)は「正直なところ、いたちごっこです。罰則の金額も高くはなく、違反認定して会社名などを公開しても、また別名の会社を立ち上げたりなどが絶えないんです」と語る。  このためか、民間の人材紹介業者ではトラブルが絶えない。

スマートフォンの影響で「おとり求人」被害が増加

おとり求人

労働局で5年以上働いているという佐藤さん

 厚労省の「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査(2021年度)」によれば、人材サービスの利用状況を問う質問で、民間人材サービスを利用して経験したトラブルの内容については 「①求人企業の募集条件と実際の就業条件が違った(31.7%)」 「②人材サービスの提示する募集条件と求人企業の募集の条件が違った(16.4%)」 「③人材サービスの提示する募集情報が最新の情報ではなかった(13.8%)」  と続いた。虚偽の広告がなぜ流通しているのか。ハローワークの関係者はここ最近の流れについて、「スマートフォン片手に求人情報へ手軽にアクセスできるようになってから、おとり求人に騙される人が増加してきている」と語る。その上で、とくに問題のある求人情報はSNSなどにも増加傾向にあるとする。  求人サイトを運営する大手の人材派遣会社の関係者によれば「増加する求人情報に企業が追いついていない部分があり、就業規則や雇用体系など事前に把握できていない部分がある」と話す。
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おとり求人の常習企業に直撃
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