ニュース

「母親が息子の子どもを妊娠してしまった」障害者専門の風俗嬢が目の当たりにした“障害者と性”の問題

運命を変えた訪問看護師との出会い

 祖母の在宅介護のときに、小西さんの運命を変えた訪問看護師との出会いがあった。「理恵ちゃんが一生懸命、決めたことだから、頑張りましょう」 。その言葉でとても救われたという。祖母は3年ほどの介護の後、83歳で亡くなった。 「祖母の死後、どういう目的を持って生きていくのかと考えたとき、その看護師さんとの出会いがあったので、福祉しか考えられませんでした。あの看護師さんのように家族のケア・サポートができるような人になりたい」  そう思った小西さんは、介護初任者研修の資格を取りに学校へ行く。高齢者介護をするつもりだった彼女だが、障害者向けのグループホームを訪問した際に、全くサポートされていない男性の利用者から「何の楽しみもない」と言われたことをきっかけに障害福祉の道を選んだ。  その後、好きな人がいるからと中途半端に辞めてしまった風俗業にまた戻る。障害者専門風俗店だった。その翌年、一般社団法人輝き製作所を立ち上げた。

お母さんに「挿れている」

介護

※画像はイメージです

 小西さんはそんな日々の中で、障害者の性の実態について、垣間見た瞬間があった。 「平日は施設・土日だけ家に帰る男性だったのですが、家で何をしているのか聞いたら『挿れている』というんです。お母さんに男性器を“挿れている”という意味です。障害者の中には、肌が過敏でコンドームを嫌がる人もいます。周囲の支援者は『お母さん、それは違うよ』と止めるのですが、そのお母さんは『自分がしなければ息子は性犯罪者になってしまう』と聞かず、妊娠してしまいました。それってお母さんだけで頑張ることじゃないよねと思いました」  障害者支援の現場を取材すると、支援者に積極的にそういった相談はしないが、父親や男の兄弟がマスターベーションを手伝うケースや母親が性の相手をするといった話はよく出てくる。その逆に、知的障害のある娘が避妊を知らずに妊娠・中絶を繰り返すケースもある。  相談にも来られない。家の中だけで成り立ってしまっている。そういうリアルはないものとされてしまっている。「そういった障害がある人たちに、分かる表現で、性教育をすることはとても大切なことです」。  そんな思いから、小西さんは障害者支援者や支援学校のPTAに招かれ、性教育の大切さを講演している。また、重度の知的障害・発達障害がある場合、耳から聞いたことよりも、目から見た情報のほうが理解しやすい場合が多い。本人に分かりやすいように性教育をしなければ、性犯罪などは防げない。
次のページ
「性」は生きるために必要なことではないのか
1
2
3
4
5
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

記事一覧へ
おすすめ記事