ニュース

「母親が息子の子どもを妊娠してしまった」障害者専門の風俗嬢が目の当たりにした“障害者と性”の問題

強度行動障害者へのサービス提供

 重度の知的障害や発達障害で、強度行動障害のある人もいる。強度行動障害は、厚生労働省の定義では「自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態」を意味する用語だ。  そういった人には特別なサポートが必要になる。 「強度行動障害がある人に対する関わりについては勉強し、資格取得もしました。その際に発達障害者の方への視覚的支援についても学びました」  発達障害の人にサービスを提供した時には、小西さんはサービス前に、サービスの流れを紙に書いて、視覚的に分かりやすいように説明するようにした。発達障害の人は、耳から聞いた情報の処理は苦手だが、図や文字を使った視覚からの情報処理が得意な人が多いからだ。そういった支援がないと、先の見通しが立たずにパニックや不安につながる。結果的に小西さんのサービスを受けて、その利用者男性がパニックになることはなかった。

日本の障害者への性サービスの現状

小西理恵

インタビューを受ける小西理恵さん

 売春が合法のオランダでは、1980年から、性サービスの提供が行われている。自治体により、性的サービスを受けた人に障害がある場合、条件次第では医療保険の適用を認めるケースもある。デンマークやフランス、ドイツ、スイスが後に続き、WHO(世界保健機関)は、障害者の性の問題について福祉の現場で相談に応じることを推奨している。  日本の現状はどうなのか。「日本でもやっと同性介助が推奨されるようになり、人権の問題的にはずいぶん救われたと思います」と小西さんは語る。ただ男性ヘルパーは圧倒的に不足しているので、男性の当事者が女性ヘルパーから介助されることも多いとも。  最後に小西さんの今後の目標を聞いた。 「ご本人たちに分かるように性についてお伝えしたい。性についての学びや情報がないことで、丸裸のまま社会に出ていかれる方が多いです。性犯罪が起こる前にできることがいっぱいある。教育の中で性についての正しい情報や知識が伝わるようにしたいです」  障害者の性のサービスについては後進国の日本だが、家庭内だけで抱え込める問題ではなく、社会全体で考えていかなければならない問題だろう。 <TEXT/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
1
2
3
4
5
おすすめ記事