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焼肉食べ放題店の元経営者が明かす、注文されると“苦しい”メニュー。上・中・下の価格帯で店が一番儲かるのは

焼肉食べ放題はどうやって儲けるのか?

 私が焼肉店を経営していた時、最も儲かるメニューと言えば、食べ放題であった。単品注文用で高額商品の和牛の特選ロースや特選カルビもあったが、一般のお客さんではなかなか注文しにくい価格かつ、商品回転率が低いので在庫管理に苦労した。また、高級和牛肉や専門性の高い一品料理を提供するには職人が必要となり、人件費も高くなる。  一方で、食べ放題に関しては、セントラルキッチンである程度の加工をしていれば、店のアルバイトでも十分に対応が可能である。食べ放題に注文が集中すると仕込みや段取りなど作業がやりやすく、作業の標準化・単純化が実現できる。  味変などで追加できる品目数を増やし、お客さんに選択肢の多さをアピールするものの、実際には追加されるメニューのパターンは決まっているため、アルバイト中心の運営が可能である。  今は各店の競争が激しくなり、メニューが多品目化し、若干調理作業が煩雑化しているが、それでも食材の共通化や半加工商品化による種類の増加で品数が多い割には、在庫と作業負担を軽減できている。

注文されると収益的に苦しい部位は?

 一般的に焼肉食べ放題の費用構造は原価35%、人件費25%、業務費10%、管理費20%、営業利益10%の店が多い。業態にもよるが飲食店の場合、重点管理費用は当然に原材料費と人件費であり、これら「FLコスト(材料と人件費)」を徹底的に管理すれば、儲けが出る。  食べ放題の品目の中でも、原価10%の商品もあれば70%の商品もある。メインの焼肉の中でも塩牛タン、歩留まりにもよるがロース、カルビ、上ハラミなどは原価が高く、これらに集中すれば店は収益的に苦しい。特に希少部位である牛タンは上価格帯の食べ放題でしか入れられないのが現状である。  高原価の肉ばかり食べられると原価が高騰するから、他の一品メニューに分散させて原価率の安定化に努める。ホルモン系統、キムチ、サラダ、わかめスープなどの低原価商品に誘導し、推奨販売させれば、標準原価である35%を維持でき、店も顧客も双方が満足する。  食べ放題店は必ず複数のプランを用意しており、上・中・下の価格帯になっている。その中で、和牛や国産牛を入れた上位のプランは儲けが一段と違う。和牛などの霜降り肉は脂でしつこくなるから、量を食べられず、すぐにダウンしてしまうからだ。最初はピンク色の霜降り肉を見て、歓声を上げるが、実際に食べるとなるとそれは別である。すぐにあっさりとした原価の低いサラダやキムチなど一品メニューに移行してしまい、店としても単価は高く、原価も低いドル箱プランである。
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孤食をターゲットにした「新たな焼肉」スタイル
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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