更新日:2024年08月02日 16:10
ライフ

古民家で過ごすおっさんの夏。少年時代の夏の思い出が恐怖とともに蘇った

ossan1-1おっさんは二度死ぬ 2nd season

ミッションイン古民家

 大人になるほど童心にかえって夏休みを満喫する必要がある。そう、おっさんほど夏には夏らしいことをしなければならないのだ。青い空、入道雲、セミの声、ガチガチに凍ったアイス、昼を超えて少し萎んだアサガオ、道路に浮かぶ陽炎、遠くに置き忘れた夏は、僕らおっさんを少年へと誘ってくれる。 「この夏は古民家でワイワイやりませんか?」  そう誘ってくれた友人もまた、おっさんではあるけど少年の夏を忘れない男だ。  山深い場所に祖母が住んでいた古民家が空き地の状態であって、自由に使えるので皆で楽しもうという趣旨の集まりだ。とにかく夏らしいことをして少年の日々を思い出そうという意図があったように思う。  少年の日の夏を体感する。さらに、おっさんになって酒まで覚えているので、少年の夏+酒である。こんなもの楽しくないはずがない。 「7月の26日から29日まででいきます」  その古民家は奈良県の吉野という場所にある。そう言われたのでなんとかスケジュールを調整し、日程を合わせて26日の午後には関西に到着し、そこから奈良県の吉野を目指すプランを立てた。まあ、夜には古民家に到着できるだろうという目論見があった。

さっそく距離感覚がバグった

 おそらく、仲間たちは26日の午前には古民家に到着し、夏らしいことをして大盛り上がりのはずだ。僕が到着する頃には宴が始まっていて「おそいよー、先にビールいっちゃったよ、スイカも冷えてるで」「めんごめんご、仕事の都合がつかなくてさ」みたいな感じになると考えられた。  予定通り、26日の午後に関西入りし、あと数時間もすれば古民家に到着できる感じだったので、家主に連絡をする。 「だいたい夜の8時くらいに吉野につきそうだよ」  この古民家には以前にも行ったことがあるのだけど、最寄りの駅からかなり遠かった記憶がある。駅に着く時間を教えることで遠回しに「車で迎えに来て」と要求しているのだ。なかなかしたたかな僕だけど、家主から帰ってきた返事は意外なものだった。 「え? なにいってんの?」  予想外の返事に全身から汗が噴出する。 「26日から吉野に行くってのは、26日の夜遅くに車で東京を出発するって意味だから、みんな27日の早朝に吉野に到着するよ」  とんでもないことになった。
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古民家はとんでもない場所にあった
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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