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焼肉店の倒産件数が“過去最多”になったワケ。お店が増えすぎて「値上げもできない」

配膳ロボットの活用やDX化の推進でコスト削減

配膳ロボット 飲食店のKPI(重要業績評価指標)はFL比率(材料費と人件費の比率)であり、利益を上げるためには、人件費管理も重要だ。最低賃金も10月から50円上がり、社会保険の適用も拡大され、人件費の上昇は待ったなしだ。  大手焼肉店は配膳ロボット(配膳ロボットは標準型で月額リース料は33,250円、1日12時間×30日稼働で時給92円となる)を活用し、人手不足や人件費抑制策に対応している。  その他の販売管理費に於いても、各店がDXを推進しており、客も慣れてきたようで別段の違和感はなさそうだ。案内の自動化、注文やメニューブックもデジタル化、セルフレジ、等を巧みに業務プロセスの中に取り入れている。  こういったDX化の推進で各店が経営効率を競い合って、大胆な値上げによる客離れを回避している。そもそも焼肉は、調理のメインである「焼く」をお客さんに任せることと、一品メニューを簡単メニューにすることで、職人が必要がなく、コックレスの仕組みを確立して人件費を抑制できる特性がある。  職人の高い給料が不必要な分を原価に充当しているから、焼肉食べ放題は費用構造的に成り立っているものだ。しかし、最近の高騰するその他経費、水光熱費の高騰、などで利益が削られ、薄利多売になっているのが実情のようだ。そういった内部環境の中、各店が利益創出のために創意工夫している。

焼肉店も参戦し始めた孤食市場

 焼肉食べ放題は提供スタイルを変えながら、30年以上の歴史がある人気メニューである。店舗数で1位の牛角(全世界825店舗、2024年3月時点)や売上で1位の焼肉きんぐ(物語コーポレーション焼肉部門の売上552億円、店舗数325店舗(2024年6月時点)は話題の店だ。  昔と比べると随分高くなったが、それでも週末は満席状態であり、中には予約も取れない店があるのも事実だ。また、最近は孤食を好む人も多くなっている。単身世帯比率も年々高まっており、そういった社会構造的な背景から、積極的に一人客を受け入れる焼肉店が増えている。  代表的な店としては、焼肉ライク(国内93店舗、2023年4月)があるが、同じようなコンセプトの一人焼肉店をあちこちで見るようになった。2020年の国勢調査によると単身者世帯は38%で、5年前と比較すると3,4%増加しており、単身者世帯の増加で、さらに孤食市場は成長するのではと推察する。
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新たな需要に応えて人気を得た焼肉ライク
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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