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尖閣問題、政財界は中長期的ビジョンに立った対応をせよ!【孫崎享×田中康夫】

尖閣諸島をめぐる中国の反日運動はおさまらず、一向に出口が見えない。一体どうすればこの問題は解決できるのだろうか? その方法を探るべく、新党日本代表・田中康夫衆院議員が、国際情勢の裏事情に精通する孫崎享氏を直撃!!

【田中康夫氏】
’56年生まれ。衆議院議員、新党日本代表、作家。長野県知事、参議院議員などを歴任。著書に『田中康夫主義』(ダイヤモンド社)など。www.nippon-dream.com/

【孫崎 享氏】
’43年生まれ。’66年に外務省に入省、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授などを歴任。著書に『戦後史の正体』(創元社)など

◆紛争を避ける英知を持っていたかつての保守政治家に学べ

田中康夫氏,孫崎 享氏

田中康夫氏(写真左)×孫崎 享氏(写真右)

田中:日中関係が、尖閣問題で極度に悪化しています。日本人の中にも、中国に強硬な態度を取ることが“愛国”だと考える人も出てきている。もちろん、中国で日系企業が襲われたり、日本車がひっくり返されたりするのは許せません。が、であればこそ冷静・冷徹な判断が必要だと僕は思います。

孫崎:まったく同感です。私は「尖閣諸島は日中間の“係争地”である」と発言しただけで「売国奴」「中国に帰れ」と罵られましたが、まず事実を正確に認識することが日本の国益に合致します。今回の日中関係の悪化を「中国依存を見直すいい機会」などと言う人がいますが、とんでもない。中国の工業生産額は’10年に米国を抜きました。このことは日本ではあまり認識されていませんが、世界史的な大事件だったんですよ。100年以上続いた“米国の時代”の終わりを告げる出来事です。

◆日本の政財界には長期的ビジョンがない

田中:’95年には、日本の対中輸出額は対米輸出額のわずか6分の1にすぎませんでした。それが’08年に逆転し、差は拡大する一方。いまや日本にとって、中国は最大の輸出先になりました。

孫崎:欧米や韓国も事情は一緒で、「中国市場への参入は自国企業が世界企業として生き残るための必須条件」と考えられています。ドイツのメルケル首相は今年、閣僚を引き連れて2回も訪中しました。これは極めて異例なことです。これまで日本のほうを向いていた韓国の保守系政治家や財界人も、活発な“中国詣で”を始めています。米国、EU、韓国と中国市場でしのぎを削っている日本にとって、今が一番苦しい時なんですよ。ところが、日本は尖閣問題で中国市場から撤退しようとしています。これは各国にとっては、日本企業のシェアを奪うチャンスです。日本の政財界には、まったく長期的なビジョンがありません。

田中:政権交代前から歴代政権が領土問題でやってきたことは「戦略・戦術なき問題の先送り」です。政府には北方対策本部はあるけれど、領土問題を統括する部署がありません。外務省、防衛省、国交省、農水省などが、縦割り行政で外国船の取り締まり、地下天然資源、漁業権益の問題などを管轄してきました。こんな構えでは立ち行かないので、僕は今年2月の衆議院予算委員会で「統合的に対処する領土・領海部を内閣府に設置すべき」と提案したんです。でも野田首相の答えは「検討します」。つまり官僚用語で、「やりません」ってことですよ。

孫崎:それから2か月後の4月に、石原慎太郎東京都知事がアメリカのヘリテージ財団(※)で尖閣諸島の買い取りを表明したわけですね。最初に領土問題に火をつけたのは石原さんであることは間違いありません。人気とりのためなのか、信念からなのかは知りませんが。

田中:地権者に翻弄されて最後はメンツを潰された石原さんや猪瀬直樹副知事がだんまりを決め込んでいるのは不可解。14億円もの寄付金を払った人たちにどう説明するのか。野田政権の責任はもっと大きい。40億円もの負債を抱えるいわくつきの地権者に20億5000万円を払って逆に虎の尾を踏んでしまった。結局は中国につけいるスキを与えて、実効支配していた領土を危機に陥れ、逆に国益を損なっている。

⇒続きはこちら『ポツダム、カイロ宣言の内容を知らない日本人』
http://nikkan-spa.jp/313550


※ヘリテージ財団
’73年に創設された米国のシンクタンク。自由な企業活動、小さな政府、個人の自由、米国の伝統的価値、そして強い国防力の原則に基づく保守的な公共政策の推進を標榜する。共和党政権の軍事政策や新自由主義政策など、米国政府の政策決定に強い影響力を持ってきた。石原都知事がこの財団で尖閣買い取りを表明した背景に、米国の保守派や軍事産業の意向を見るジャーナリストもいる。

― 国益を最大化する[尖閣問題]の対処法【1】 ―

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