中国が攻めてきても米国が動かない理由とは?【孫崎享×田中康夫】Vol.3
尖閣諸島をめぐる中国の反日運動はおさまらず、一向に出口が見えない。一体どうすればこの問題は解決できるのだろうか? その方法を探るべく、新党日本代表・田中康夫衆院議員が、国際情勢の裏事情に精通する孫崎享氏を直撃!!
⇒Vol.2『ポツダム、カイロ宣言の内容を知らない日本人』
https://nikkan-spa.jp/313550 ◆中国が攻めてきても米国は助けてくれない 田中:尖閣国有化は「覆水盆に返らず」の高い授業料でした。経済力の弱かった中国が棚上げしてきた間に、「人道的見地から、日本のお金で悪天候時の避難港と灯台を造りましょう」「他国の船舶も使える強力無線アンテナを建てましょう」と、全方位外交を展開しておくべきでした。でもそうした独自外交は行わず、ひたすら米国に追従してきた。 孫崎:ところがその米国は、中国が尖閣に攻めてきたとしても助けてくれません。他国の国益のためには動かないのです。すでに、米国が手を出さなくても済むシステムができあがっています。日米安保条約第5条には、「日本国の施政の下にある領域」で武力攻撃があった場合、米国は自国の憲法に従って対処すると書いてあります。 田中:いくらクリントン国務長官が「尖閣は安保の範囲内」とリップサービスしようとも、米国憲法では交戦権は議会が持っていますから、現実には「議会の承認を得ないと応戦不可能」ということですね。NATO条約の場合は、攻撃があれば軍事力の使用を含めて直ちに行動することになっていますから、まったく対応が違う。 孫崎:それだけではありません。’05年に「日米同盟 未来のための変革と再編」(※)という文書が日本の外務大臣・防衛大臣と、米国の国務長官・国防長官との間で交わされたのですが、それによると「島嶼の防衛は日本が自分でやる」ということになっています。するとどういうことが起こるか。まず中国が尖閣に攻めてきて、日本はそれに対応します。そこで守りきれなければ島の管轄は中国に移る。そうなると、尖閣はもう安保の対象外。つまり、中国にいったん武力で奪われれば、日本は独力で奪還しなければならないのです。 田中:レオン・パネッタ国防長官も、「尖閣諸島の帰属に関して米国は中立」と強調しています。どうして米国が日本を守ってくれると信じ切れるのか。これはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にも共通します。いまだに「TPPは日米連携の中国包囲網だ」と“お花畑”信仰な政財界人がいますが、米国の対中輸出額は’07年に対日輸出額を抜き去り、その差は拡大の一途。米国が日本よりも中国との関係を優先することは明らかです。現に、訪日の翌日に訪中したパネッタ長官は「我々の目標は、米国と中国が世界で最も重要な2国間関係を確立すること。そのうえでも緊密な軍事関係が鍵」と梁光烈国防部長に述べたと米軍の『星条旗新聞』が報じています。 ⇒Vol.4『米国に巣食う「日中対立」を煽る勢力』
https://nikkan-spa.jp/313552 ※日米同盟 未来のための~ 米軍の世界的再編の中で、テロとの闘い、イラク支援、災害支援など、新たな日米同盟の役割・任務・能力について交わされた合意。「2.役割・任務・能力についての基本的考え方」に、「日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する」という一文がある(外務省による仮訳)。 【田中康夫氏】 ’56年生まれ。衆議院議員、新党日本代表、作家。長野県知事、参議院議員などを歴任。著書に『田中康夫主義』(ダイヤモンド社)など。www.nippon-dream.com/ 【孫崎 享氏】 ’43年生まれ。’66年に外務省に入省、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授などを歴任。著書に『戦後史の正体』(創元社)など ― 国益を最大化する[尖閣問題]の対処法【3】 ―
https://nikkan-spa.jp/313550 ◆中国が攻めてきても米国は助けてくれない 田中:尖閣国有化は「覆水盆に返らず」の高い授業料でした。経済力の弱かった中国が棚上げしてきた間に、「人道的見地から、日本のお金で悪天候時の避難港と灯台を造りましょう」「他国の船舶も使える強力無線アンテナを建てましょう」と、全方位外交を展開しておくべきでした。でもそうした独自外交は行わず、ひたすら米国に追従してきた。 孫崎:ところがその米国は、中国が尖閣に攻めてきたとしても助けてくれません。他国の国益のためには動かないのです。すでに、米国が手を出さなくても済むシステムができあがっています。日米安保条約第5条には、「日本国の施政の下にある領域」で武力攻撃があった場合、米国は自国の憲法に従って対処すると書いてあります。 田中:いくらクリントン国務長官が「尖閣は安保の範囲内」とリップサービスしようとも、米国憲法では交戦権は議会が持っていますから、現実には「議会の承認を得ないと応戦不可能」ということですね。NATO条約の場合は、攻撃があれば軍事力の使用を含めて直ちに行動することになっていますから、まったく対応が違う。 孫崎:それだけではありません。’05年に「日米同盟 未来のための変革と再編」(※)という文書が日本の外務大臣・防衛大臣と、米国の国務長官・国防長官との間で交わされたのですが、それによると「島嶼の防衛は日本が自分でやる」ということになっています。するとどういうことが起こるか。まず中国が尖閣に攻めてきて、日本はそれに対応します。そこで守りきれなければ島の管轄は中国に移る。そうなると、尖閣はもう安保の対象外。つまり、中国にいったん武力で奪われれば、日本は独力で奪還しなければならないのです。 田中:レオン・パネッタ国防長官も、「尖閣諸島の帰属に関して米国は中立」と強調しています。どうして米国が日本を守ってくれると信じ切れるのか。これはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にも共通します。いまだに「TPPは日米連携の中国包囲網だ」と“お花畑”信仰な政財界人がいますが、米国の対中輸出額は’07年に対日輸出額を抜き去り、その差は拡大の一途。米国が日本よりも中国との関係を優先することは明らかです。現に、訪日の翌日に訪中したパネッタ長官は「我々の目標は、米国と中国が世界で最も重要な2国間関係を確立すること。そのうえでも緊密な軍事関係が鍵」と梁光烈国防部長に述べたと米軍の『星条旗新聞』が報じています。 ⇒Vol.4『米国に巣食う「日中対立」を煽る勢力』
https://nikkan-spa.jp/313552 ※日米同盟 未来のための~ 米軍の世界的再編の中で、テロとの闘い、イラク支援、災害支援など、新たな日米同盟の役割・任務・能力について交わされた合意。「2.役割・任務・能力についての基本的考え方」に、「日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する」という一文がある(外務省による仮訳)。 【田中康夫氏】 ’56年生まれ。衆議院議員、新党日本代表、作家。長野県知事、参議院議員などを歴任。著書に『田中康夫主義』(ダイヤモンド社)など。www.nippon-dream.com/ 【孫崎 享氏】 ’43年生まれ。’66年に外務省に入省、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授などを歴任。著書に『戦後史の正体』(創元社)など ― 国益を最大化する[尖閣問題]の対処法【3】 ―
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