直木賞作家・辻村深月「肩に力が入らなくなったときこそ、高く飛べる」
短編集『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞した作家の辻村深月。「普通であることがコンプレックス」だった少女は、いつしか普通であることを武器に作家としての言葉を手に入れた。「バッドエンドがほとんどない」という作風で知られてきた彼女が、受賞作を通じて得た新境地とは?
「大人に推奨されるようなものだけは書きたくないと思って、今までやってきたんです。『イイ話』という言葉で紹介されてしまうと、むしろ読まなくなる子たちが絶対いると思うんですよ。夢がいっぱいのものに興味がない人たち、夢を見るのを押し付けられるのがイヤだという人たちに届くといいなと思いながら書いているところがあります」
直木賞受賞作『鍵のない夢を見る』は、辻村作品史上まれに見る毒気がある作品だが、どういった意図で書かれたのだろうか。
「ハッピーエンド以外を読み慣れていない読者にとっては、すごく響くものにはならないかもしれないけれど、確実にこういうものを必要としてくれている人もいる……そう思いながら送り出しました」
この作品は3度目の直木賞候補作だったが、1回目の『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』と、2回目の『オーダーメイド殺人クラブ』は、それぞれ辻村にとって最高傑作だと思っていたという。一方、『鍵のない夢を見る』はまだ「入り口」の作品だったそうだ。
「こういう感じのものをチャレンジしてみて、ここが最高点というわけじゃなく、まだまだここから飛べるだろうと思って送り出したところを、こんなふうに評価していただいた。ふっと肩に力が入らなくなったときこそ高く飛べるって、面白い感覚です」
※週刊SPA!10/30発売号の「エッジな人々」より
本誌構成/吉田大助 撮影/アライテツヤ 再構成/SPA!編集部
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