腕時計もクルマも好きな斉藤由貴生です。私は、現代のおかしな消費を変えるために実践を重ねながら、いろいろ研究してきました。私は30代のいわゆるバブルを全く知らない世代です。所有欲の薄い世代とは言われますが、私の場合は、むしろ価値あるものは我慢せず所有したいと考えています。そんな私の価値観を、不定期ですが披露したいと思います。
斉藤由貴生
第28回 100万円する高級品が中古なら15万円で買える
「いい音で音楽を聴きたい」という思いは昔から需要のある願望。最近でこそ、オーディオを置く人は減ってきたようですが、それでも愛好者はたくさんいます。1980年代には高級オーディオセットが、現在では高級イヤホンが、音に対する良いモノ消費の代名詞。例えば、1980年代だったらサンスイのアンプやJBLのスピーカー、現在はBOSEのヘッドフォンやバング&オルフセンのイヤホンが思い浮かびます。
オーディオも腕時計のように奥深い世界があります
前述のとおり、現在高級オーディオの主流なのはイヤホンやヘッドフォン。同じ音を奏でる装置でも大型スピーカーではなくイヤホンなのです。高級オーディオがイヤホンのほうにシフトしたきっかけをつくったのはiPodの普及でしょう。2001年に初代iPodが登場し、1000曲をボタン1つで操作できるようになりました。ちなみに、初代iPodは定価4万7800円という高額商品であり、一部の最新型Mac(当時)でしかつなぐことができないというかなりのニッチ商品。
なお、価値としては初代iPod、日本国内では高値で取引されていませんが、海外では新品が200万円で落札されたりしているので要注意です。余談ですが、初代iPod、当時中学3年の私も新品で購入して使っていました。特に電車の中でクリクリやると他の人から「なんじゃありゃ」っていう目線を感じたので快感だったりしたのを覚えています。
iPodが出る以前の音楽の聴き方は、聴きたい曲ごとにCDをセットするという作業が必要でした。レコードのA面からB面に引っくり返す、という作業からは楽になったCDですが、レコードだったら30分に1回必要だった作業を60分に一度に延ばしたにすぎません。それがiPodの場合、1000曲入るので、ボタン一つで好きな曲の数々を長時間聴くことができる。これが非常に画期的だったのです。
しかし、その機能が音楽を聴くということを非常にシンプルにしてしまったため、人と音楽の境界線を悪い意味で取り払ったとも言えるかもしれません。つまり、それまで音楽を聴くためにはレコード(CD)をセットする、という手順が必要だったのに、ボタン1つで再生できるiPod。すると、人はそのiPodを良いスピーカーに繋いで聴く、というのではなく、イヤホンのまま聴くというスタイルを選ぶようになります。
売ることを考えて買おうと思ったらバング&オルフセンがお得な理由
そして、時代はiPhoneへ。今、音楽を聴くとすれば、YouTubeや音楽配信サービスが主流かもしれません。しかし、実際にいい音で音楽を聴くと、やはり違います。
実際、大型スピーカーとか、アンプといった高級オーディオの中古品は一定の価値を保っています。高級オーディオの世界は、奥が深く、ハマればハマったで楽しいとは思うのですが、単に「いい音を聴きたい」というだけではどれを選んでよいかわからないのも事実。
そこで、オススメなのがバング&オルフセンです。バング&オルフセンといえば5万円ぐらいするイヤホンが一時期流行ったので聞いたことがあるかもしれません。しかし、バング&オルフセンの主力製品は、100万円クラスの高級オーディオなのです。
販売価格35万円のBeoplay A9 4th GEN GVA内蔵モデル(バング&オルフセンジャパン オンラインストアより)
バング&オルフセンを一言で言うと、オーディオ界のブランド品。つまり、店構えもブランディングも高級ブランド品の手法そのもの。そして、一つひとつの価格が高く、ラインナップ数が少ない、というのが「売りやすい」最大の利点です。
売り目的の場合、ラインナップ数が少ないのが非常に重要です。例えば、パソコンの世界で、定評のあるモノといえば、MacBookシリーズと、ThinkPadとレッツノートの3つですが、一番価値が落ちづらいのはMacBookです。そして、一番ラインナップ数が少ないのもMacBookです。ThinkPadとレッツノートはモデル数が多すぎて、よっぽどのファンでないと内容を把握できません。しかし、MacBookは、ProとAirぐらい。この2つの名称は、一般人ならほとんど知っているでしょう。最強のブランドです。
販売価格49万9932円のBeosound Edge(バング&オルフセンジャパン オンラインストアより)
バング&オルフセンもそれと同じです。ラインナップされている製品はせいぜい3種類ぐらい。アンプとスピーカーを合わせても10種類以下っていうシンプルな商品構成です。ですから、レコードの時代のモノまで遡ったとしても製品はそんなに多くなく、どのモノも新品価格がとても高く、なおかつ特徴あるデザインなので、価格が安定しているのです。
スピーカーかイヤホンか、どちらの音が良いかはオーディオマニアでも意見が分かれるところでしょうが、3万円の高いイヤホンと新品で100万円するバングアンドオルフセンのオーディオセットとだったら、バング&オルフセンのほうが音がいいのは明確。大抵のお金持ちの家には置いてあります。
しかし、そのお金持ちの家に置いてあるアイテムこそ、「売れる」代物。15万円ぐらいで売られている中古のバング&オルフセンはここ何年かほぼ相場が変わっていません。しかも、オーディオの場合、それほど程度が悪くなるわけではありません。湿気が多いとか、住環境によってはスピーカーのコーンが割れてしまうということがあるかもしれませんが、基本的にはメンテナンスフリーと言っていいでしょう。
ただし、バング&オルフセンのCD読み取り装置は比較的壊れやすく、その場合は直すのに約5万円かかります。それを差し引いたとしても、中古品はお得です。
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、
「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『
腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『
もう新品は買うな!』がある