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アルファード、ランドクルーザー…相次ぐ「自動車盗難被害」の現状と対策は?トヨタの公式見解も

 自動車の盗難事件が社会問題になっている。令和3年は5182件、4年は5734件、そして5年は5762件と事件数は増加の一途を辿る。とりわけ、アルファードやランドクルーザーといったトヨタ車の盗難被害が多く、芸能人や政治家の被害も度々ニュースで報道されている。  盗難被害が増えている現状や、犯行の実態について、カーセキュリティ専門ショップ「A2M」代表の撹上(かくあげ)智久さんに話を伺った。
A2M代表・撹上氏

カーセキュリティ専門ショップA2M代表・撹上智久さん

盗難車は解体され「部品」として海外へ

 自動車の盗難被害が増加している背景について、撹上さんは「圧倒的に海外へ輸出されるケースが多い」と述べる。窃盗グループは自動車が欲しくて盗んでいるのではなく、資産価値の高い自動車を盗み、海外で換金することが大きな狙いになっているわけである。 「盗難被害に遭ったドライバーは必ず警察に連絡するため、盗難した自動車をそのまま日本で乗ることはまずあり得ません。検問で引っかかる可能性もあるし、車検にも出せない。一部、車体番号を偽造して他の車として国内で乗っているケースはありましたが」(撹上さん)  盗難車は外部の目が届きにくい「ヤード」と呼ばれる施設で解体され、「部品」という名目で海外へ輸出される。 「盗難車なので、『自動車』という名目でまるごと海外輸出するのは難しいんです。解体された部品はそのまま使われる場合もありますし、組み立て直して販売することもあるようです」

盗難から輸出までの凄まじい犯行スピード

 また、窃盗グループは「闇雲に犯行を行っているのではない」と撹上さんは続ける。 「当店の周辺でも、2~3人の外国人が自動車に乗って、住宅街を徘徊する様子を見かけます。需要の高いアルファードやランドクルーザーがどの住宅にあるかチェックしていているんですね。海外から注文が入ったら、事前に把握している場所で迅速に盗む。極めて用意周到に準備しているのです」  このような動きが活発化しているのは、ヤード条例を制定する自治体が増えていることに起因する。今までは令状がないと、警察官がヤードに立ち入ることができなかったが、怪しい動きが見られた場合には、任意で警察官が立ち入れるようになった。  そこで、窃盗グループはヤードに盗難車を保管しておく時間を極力短くするために、海外からの注文が入ったのを合図に自動車を盗むようになった。ヤードで解体作業をしてから海外へ輸出するまでの犯行スピードが速いため「一度盗難された車の発見は難しい」という。
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盗難手口の”デジタル化”が進んでいる
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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