次期総選挙の前哨戦!? 民自公×第三極の【山口県知事選】
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
橋下徹市長のエネルギー問題のブレーンだった飯田哲也氏(「環境エネルギー政策研究所」所長)の出馬で、自公推薦の山本繁太郎氏との一騎打ち状態となった山口県知事選(7月29日投開票)が、次期総選挙を占う一大決戦の様相を呈してきた。
というのもこの選挙、「原発再稼働・消費税増税をすすめる民自公」×「それに反対する第三極」という構図となっているからだ。
7月7日、山口県防府市内のホテルで山本氏の決起集会が開かれた。仕事帰りの作業着姿の地元建設業者も十人以上がそろって参加する中、安倍晋三・元首相と高村正彦・元外務大臣が講演をしながら山本氏への支持を訴えた。
「日本の課題」と題した講演で安倍元首相は「消費増税の三党合意に『経済弾力条項』があって、名目経済成長を3%にしましょうと書いてある」と指摘した上で、デフレ脱却のために政府の積極的な公共投資が必要と強調、「建設国債を発行して日本銀行が買い取る方法が一番いい」と主張した。続いて、安倍氏が「これほど能力と経験のある人はいない」、高村氏も「日本一の知事になる」と絶賛する山本氏が登場、その決意を訴えた。
「県内の産業を再起動させるためには、港湾をはじめ道路のアクセスといった基本的な環境(インフラ)整備を最大限の努力で進めていかないといけない。こういう話をすると、『国交省で仕事をしてきたから、すぐそういうことを言う』と揶揄されてしまいます。しかし産業再生に必要なことは、何と言っても環境整備。揶揄されてもやるべきことをきちんとやる。県政に王道はない。最優先でやるべきこととして、この問題に取り組む覚悟でございます」
一方、元改革派経産官僚の古賀茂明氏は7月16日、山口県岩国市で開かれた講演会でこう訴えた。
「消費税を上げて何に使うのかというと(公共事業)バラマキです。『増税をしたら財政が少し楽になるから防災と減災のための公共事業にあてます』と条文に書いてある。法案が衆院を通った日に自民党の道路族のドンである二階俊博衆院議員が『今度の修正でまた公共事業に予算を使う道が開けた』と会見で言っている。山口県でも安倍元首相が『(公共事業を)ばらまくぞ』と言った。小泉政権を引き継いだ安倍元首相は、改革派のイメージが強かったので驚いた。自民党の国会議員はテレビに出た時は『改革だ』と言うのですけれども、地元に帰ると『バラマキだ』と言う。民主党も自民党もダメで一緒になって公共事業のバラマキを始めようとしている」
この講演会で古賀氏は、「自民党には4つの大罪がある」と説明。それは、900兆円の借金を作った罪、20年前から分かっていた少子高齢化を放置した罪、既得権者(農協・日本医師会・電力会社)と癒着して日本を成長できない国にした罪、そして原発事故を招いた罪。このうち3つ目の罪について古賀氏が説明したところで、「大阪府市エネルギー戦略会議」の盟友だった飯田氏が登場し、古賀氏との対談となった。ここで飯田氏は、公共事業や補助金のバラマキとは違う新しい道をこう訴えた。
「世界でいま起きているのは、自然ネルギー革命。それが地域から起きる。山口で全く新しいエネルギーの形、社会の形、政治の形を作れる。日本全体としては、沈みゆくタイタニック号の中で新しい救命ボートを作れる歴史的なチャンスではないかと思う」
民自公×第三極という対決の前哨戦である山口県知事選が、第三極集結の発端となる可能性は十分にあるのだ。 <取材・文・撮影/横田一>
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