ブームの裏で増加している 「リノベーション失敗」物件
アベノミクス効果や五輪招致の成功で活況を呈すマンション市場。ベイエリアを中心に高層マンションが次々に建設されているが、その一方では、経年劣化の激しい“おんぼろマンション”も増加し、なかには深刻なトラブルを抱える物件も少なくない。住民の高齢化、共用部にはゴミが溢れ……“負のスパイラル”にはまり「スラム化」するマンションの惨状を追った。
◆ブームの裏で増加している 「リノベーション失敗」物件
近年、老朽化したマンションの活用法として、リノベーションをしてから売り出す「リノベ物件」が注目されている。しかし、人気の高まりとは裏腹に、杜撰な工事によるトラブルも続出しているという。住宅診断を行う個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所の辻優子氏が話す。
「特に問題が多いのは水回り。工事が終わって『あとは購入者に引き渡すだけ』という状態の物件を診断すると、洗面台下の排水管から水漏れしていたり、触れただけで管が壊れて水が噴出した物件もありました。表面上はきちんと補修を行っているように見えても、床下などでは配管の劣化によって水漏れし、カビが増殖しているケースもあります」
また、それ以外に「驚くほど初歩的なミスも多い」という。
「トイレや台所の換気扇のファンが逆に取り付けられていて、室内の空気を排出せずに“逆流”するケースがありました。そうなると、臭いは住居内に流れ込むし、コンロの火を逆に煽ってしまう。ほかにも、本来なら耐火性がある素材を使わなければいけない部分を無視してしまっていた例もあります」
◆参入障壁の低さがリノベ失敗を招く
杜撰な工事が行われてしまう背景について、「リノベーション業界がまだ過渡期にあるから」と、辻氏は指摘する。
「実はリノベーションの工事は役所への届け出の義務がありません。そういった障壁の低さから、次々に新規業者が参入し、なかには正確な知識がないまま施工を行う業者も出てきているのです。だから、悪意のもとで杜撰な工事を行っているというよりも、『何をどこまでやればいいかわからない』という状態でリノベーションに失敗しているケースが多い。もっと業界自体が成熟してくれば改善されると思うのですが……」
老朽化マンションが増え続けるなかで、スラム化を防ぐためにもその活用方法は重要になる。リノベーションはその一助となるか?
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