アベノミクスの経済成長が日本の財政問題にトドメを刺す
アベノミクスの次なるフェーズは? 消費税増税で生活はどうなるのか? TPPは? 中韓との外交問題は……などなど、我が国は今年も多くの課題を抱えている。しかし、そんな大きなトピックの陰に隠れて、実は結構日本の首を真綿で絞めるような問題がある。あまり話題にならない、日本が抱える「2014年問題」を探った
◆アベノミクスの経済成長が日本の財政問題にトドメを刺す
アベノミクスで円も株価も劇的に回復した’13年。しかし、この経済成長は一時的な財政拡大頼みの側面が強い一方、デフレ脱却後の金利上昇が日本の財政を窮地に追い込む可能性があると指摘するのは経済学者の小黒一正氏。
「消費税増税で景気が停滞すると危惧する人もいますが、その主張は税収増による将来不安の解消などのプラスの面を無視した話なので、一時的なショックを除き、消費増税で景気停滞が起きるとは思いません。それ以上に問題なのは、あの程度の消費増税では、アベノミクスでデフレ脱却が成功した場合、金利が上昇することによって起きる“利払費”の増加にとても対応できないことです」
グラフを見ると、平成元年度から、公債残高は急速に右肩上がりになっている一方で、利払費は10.6兆円から7兆円にまで下がっている。通常、債務が膨らめば当然利払いも増加するものだ。それなのに下がっているのはひとえに金利低下の効果が債務の増大を上回っていたからなのだ。
⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=568312
「金利は平成17年度からほぼ横這い状態にあります。にもかかわらず、利払費は平成18年度を最後に上昇に転じ、平成25年度には一気に上昇し、10兆円に迫る勢いになっています。これはもはや“低金利”のボーナスタイムが終わったということ。さらにデフレ脱却が成功し、金利が上昇し始めると、低金利の恩恵を受けられなくなった利払費が急速に膨張していくことになります」
また、企業の財務状況についても、密かな不安要素があるという。
「国際会計基準(リース会計)の改案が出ています。この改案では、従来、不動産の賃貸料などの短期リースは費用として処理できたものが、財務諸表の負債として計上しなくてはいけなくなります。現在は検討中ですが、もしこれが導入されると、少なくない数の日本企業に影響があると思われます」
景気が良くなっても財政の悪化は免れず、地味に日本企業に打撃を与える要素もある’14年。
「’64年の東京五輪では、過剰な設備投資を行い日本が初めて赤字国債を発行する契機になった上に、結果として昭和40年不況を引き起こしました。現状の日本の財政問題を考えると、’20年東京五輪では、アテネ五輪後のギリシャと同じ轍を踏む可能性は高い」
初の赤字国債発行から50年の節目となる’14年。’20年東京五輪の後、第二の「昭和40年不況」を迎え、日本の財政が完全に崩壊を迎える「終末」への第一歩を歩む年になってしまう公算は決して低くはないのである。
【小黒一正氏】
’74年生まれ。一橋大学大学院を経て大蔵省(現財務省)に入省。現在は法政大学経済学部准教授。世代間問題や財政・社会保障を中心に研究。『アベノミクスでも消費税は25%を超える』(PHPビジネス新書)など著書多数
― 警告[2014年問題]が意外とヤバい!【2】 ―
『アベノミクスでも消費税は25%を超える』 この国の財布がヤバイ理由 |
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