日本は「5万人の中国共産党工作員」に狙われている
元首相が立て続けに訪中し、APECで日中首脳会談が実現するなど、一見良好になっている日中関係。2年前には尖閣諸島国有化問題などで激しい反日デモが起きていたのが嘘のようだが、雪解けムードの裏には中国共産党のある思惑があった。
◆中国共産党のスパイは日本をどのように狙うのか?
10月22日、麻生太郎氏が中国の最高指導部メンバーと北京で言葉を交わし、10月29日には、同じく北京で福田康夫氏が習近平国家主席と会談した。日本側は首相経験者を立て続けに投入し、11月に北京で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)では日中首脳会談が実現した。
振り返れば、’12年9月に野田政権が踏み切った尖閣諸島の国有化と前後して、中国では反日運動が勃発。その後、’13年3月に党・国家・軍の三権を掌握した習近平は、激しい対日姿勢を貫いてきた。
それがこの11月にはいよいよ雪解けの気配である。いったい中国でなにが起きているのか。中国共産党の意思決定過程の分析に定評のある、ジャーナリストの陳破空氏に聞いた。
「そもそも、’12年に中国の各地を席巻した暴力的な反日デモは、法政委員会書記(国内治安責任者)の周永康が習近平を揺さぶるために仕掛けたもの。また、軍の制服組トップだった徐才厚らは、対外的に強硬な態度で軍の既得権を守ろうとしました。政法委員会と軍部の二重の圧力を受けた習近平は、日本を叩くしかなかったんです」
つまり、習近平が日本に対して強硬姿勢をとってきたのは、党内の権力闘争が原因だというのだ。
「2年間の権力闘争を経て習近平は周永康と徐才厚を倒し、自己の権力を固めたうえ、軍内部での『反・腐敗』キャンペーンによって軍をコントロール下に置きました。中国経済は減速傾向にあり、不動産バブル崩壊のリスクも囁かれています。そのなかで日本企業の対中投資の引き揚げが加速すれば泣きっ面に蜂。習近平が反日政策をとる理由はもうありません」
だが、中国共産党は、たとえ表面上は握手を求めつつも、水面下で攻撃の手を緩めない。また、約束破りの常習犯でもあり、彼らとの友好には細心の注意が必要だ。
例えば、普通選挙を求める学生たちが中心市街を占拠し続けている香港。’97年に英国から中国に返還された際には、一国二制度のもとで香港人による高度な自治が保証されていたはずだが、いまやほぼ中国に呑み込まれている。
「香港には非公然の中国共産党員が10万人単位で存在し、一説によれば40万人ともいわれています。彼らはスパイとして各界に潜り込んでおり、香港特別行政長官の梁振英もとっくの昔に中国共産党に取り込まれた地下党員です」
また、台湾においても活発な工作が行われている。
「台湾に潜入している中国共産党のスパイも10万人以上。メディア、教育、軍、政府など各界に広がったスパイが度々検挙されており、軍事情報に限らず経済情報も工作活動のターゲットにされています」
下記の表のように、中国人による知的財産権ドロボーは世界各国で横行しており、中国共産党が国策として経済情報の収集を強化しているのが窺える。
⇒【表】中国による主な工作活動 https://nikkan-spa.jp/750460
「台湾における最新の大きなスパイ摘発事例は、’14年8月のこと。台湾側の対中交渉機関である台湾行政院大陸委員会の特任副主任委員の張顕耀が更迭されました。彼は台湾における対中政策のナンバー2にあたる高官です」
中国を警戒している台湾ですら、政府高官や軍上層部に多数の工作を受けているとなれば、「スパイ天国」の日本に、中国共産党のスパイがいないはずがない。
⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/746661
【陳破空氏】
’63年、四川省生まれ。中山大学で教鞭を執っていた際、民主化運動の中心的存在として天安門事件に参加。2度の投獄を経てアメリカに亡命。現在はニューヨーク在住。著書に『赤い中国消滅』(扶桑社刊)や『日米中アジア開戦』(文春文庫)
●陳破空氏の最新刊『品性下劣な中国人』
なぜ中国人は世界中から非難されているのか? その疑問に陳破空氏が歴史・社会的背景などを交えながら迫る新書が扶桑社より絶賛発売中。愛や皮肉を交え、従来の中国批判本とは違った角度から現代中国人の素顔をあぶりだす一冊
取材・文/SPA!中国特捜班
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