第四十三夜【前編】

鉄火場とは無縁のコスプレ雀荘で
“麻雀コン”に酔いしれる夜

【担当記者:スギナミ】

 何を隠そう、学生時代、雀ボーイのバイトをしていたスギナミ。お店は当時、黎明期にあったギャル雀(女のコと打てる!がウリの雀荘)。働き始めた頃は、「女のコと和気あいあいの雰囲気で麻雀打って、お金までもらえる」なんて楽観していたのだが、フタを開けてみればそこは……鉄火場だった。

 働く女性スタッフはみな、ヤクザの娼婦のように退廃的でバクチ好きの姐さんたちばかり。営業中は、裏プロで生計を立てていたお店のオーナーに麻雀で負けまくり(負け代は給料天引き)、営業後の店内では、チンチロリンやら手本引きやら、ちっとも穏やかではない賭場が開帳され、姐さんたちに強引に誘われたあげく、ここでも負け続けた。気づけば、店の目の前にある学生ローンの常連になっていたのは苦い思い出だ。

「所詮はギャンブル。可愛い女のコとワイワイ楽しめる雀荘なんてありえない」

 頑なに女のコとの麻雀を拒んできた僕の耳に入ってきたのは、「女のコとのおしゃべり」を身上とするノーレート雀荘の存在だった。

RPG感覚で楽しむファンタジー麻雀
 
 平日夕方、秋葉原から中央通りを末広町方面に歩くこと8分、「あきば雀荘 てんぱね」はあった。店内にて待つこと20分、「スギナミ様、お待たせしました~」と卓に通される。同卓するのは女子高生制服姿の愛ちゃんと、チャイナガールのれいなちゃん。そして、常連客の男・オガタだ。

「合コン卓、スタートで~す」

 アニメ声の愛ちゃんがそう告げて闘牌スタート。合コン卓とは、男2対女2のことだとか。”合コン”となると、オガタはもはや恋敵。「この男よりも上の順位に立って女のコにチヤホヤされたい」と心に決めてスタート……した途端、目を疑うような光景が!

 なんと下家のオガタが、対面の愛ちゃんの手牌から、牌を抜き取っているのだ。

 まさかこの男、羊の面をかぶったばいにん玄人(『麻雀放浪記』用語:イカサマを駆使する麻雀打ち)か!? 

「イッ…イカサマだーッ」

 そう声を荒げる僕に、オガタはしたり顔でこう説明するのだった。

「やだなぁ。カードを使って魔法を発動しただけですよ。この『等価交換』の魔法は、自分の牌を1枚、女のコと交換できるんです」

 このお店では、プレイ数・トップの回数などに応じてポイントを集め、それによって自分のジョブ(戦士、魔法使いetc.)をレベルアップ。ジョブに応じて、プレイを有利にする「カード」を手に入れるなど、RPGの要素を取り入れているのだ。ジョブやカード、ミッションなどの詳しい内容は複雑なので、お店のホームページで確認してほしい。

 そんなわけで、オガタと愛ちゃんの牌交換は成立。

「え~そんなイイ牌、もってっちゃうのぉ? ずる~い」

 なんて具合に女のコとの会話も盛り上がってやがる。一石二鳥かよ、オガタ!

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写真は「等価交換」の魔法を使った瞬間。
「僕もすべては把握してませんが、カードは500種類くらいあるそうですよ」(常連客・オガタ)。
カードにはオリジナルイラストが描かれ、コレクター心もくすぐられる

撮影/石川真魚

スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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