「シェフズテーブルまでのアプローチはまるでランウェイ!」、「外資金融マンの寝酒はプレミアムテキーラ」、「次の予約もその場で取る、それが『港区ドリーマー』のルーティーン」
秀逸なキャッチコピーを楽しめる雑誌といえば、「ガイアが俺にもっと輝けと囁く」でおなじみの『MEN’S KNUCKLE』が有名。だが、同じ意味で記者が最近注目しているのが『東京カレンダー』という雑誌。冒頭のコピーは同誌最新号の特集「港区の優越」から一部抜粋したものである。
竹ノ塚のリトルマニラに集うおっさんたちが、フィリピンパブ嬢のドリンクおねだりにしわくちゃの1000円札を出すか出すまいかの攻防戦を繰り広げているのと同様、見栄と愛憎の消費合戦はどの階級にも存在していることがよくわかる。自分の懐具合と相談しながら、遊ぶお店のランクを選ぶのが常だが、ときには背伸びして“上の階層”を覗きたくなる夜もある。そんな思いに駆られる僕が向かったのは、今年6月にオープン、募集キャストの時給設定が高いことで業界の噂になった、六本木の高級ニュークラブである。
庶民派記者にとって高級店のハードルは?
ロアビルの隣、高級時計の路面店が入るビルの5階にお目当てのお店「FIVE.」はあった。ヒラヒラした美女やエリート風の外国人が行き交うエントランス。エレベーターの中からひょっこり、ジャスティン・ビーバーでも出てきそうな“セレブの魔窟”といった佇まいのビルだ。「いらっしゃいませ~」
席についたのはほどよい肌の露出とボディラインを強調した私服に身を包んだ美女4人。普段お目にかかれないクオリティの高さに、少々気後れ気味だ。これが、基本セット料金30分5000円超の破壊力か! しかし、あれだろ? 君らは僕みたいに、貧乏暇なしのアラフォーサラリーマンなんかと話すことなんてないだろ?
「アハハ。別に銭ゲバじゃないんだからお金で男の人を見たりしませんよ。むしろ、お金持ってオラってる40代は痛い。フツーに落ち着いてて包容力があればそれでいいです」(あゆみ)「お金だけで男の人を選んでいたら、いっぱい見てきたし、とっくに結婚してますよ」(こゆき)
「お金はあるに越したことはない。けど、スーパーの安売り特売しか買えない経済力じゃなければ、そんなに気にしません」(さな) 「プライベートでは赤ワインが好きだけど、気の合う仲間とならサイゼリヤのワインでもOKです。いろいろご馳走になったけど、結局一番好きなのはレバ刺しとビール」(さら) 高級キャバ嬢はオーパスワン以外のお酒じゃ酔えない……ってことはなさそうだ。「キャバ嬢も同じ人間なんです。『他の店より10倍カネ払ってるから10倍楽しませろ』って言われても……。仕事柄、何言っても平気って思われるけど、実は家に帰ってひとり泣いてることをわかってほしいな」(あゆみ)
3倍の稼ぎがあれば、夜の幸福度も3倍ってわけではない。ムリなく遊べるお店で自然に遊べばそれでいい……そんな原点に立ち返る、年の瀬、港区の夜であった。【FIVE.ROPPONGI】
住:港区六本木5-16-1 ゆきざきビル5F
電:03-5545-5777
営:20時~ラスト
料:30分5000円~(税・サ38%)
’17年6月に新規オープン。20~30歳の在籍キャストは60~70人で常時30人ほど待機。高級感のある落ち着いた内装
撮影/石川真魚
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スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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